発達支援交流サイト はつけんラボ

                 お問合せ   会員登録

はつけんカフェ

【アンフェアを生きる】⑨依存症の本当の原因(2)

この記事を読むには5分ほどのお時間がかかります

北村 碩子(きたむら ひろこ)

<(1)から続く>

以前、女性の離婚を多く引き受けている弁護士の方が、「モラハラが酷い夫から厳しい家事すべてを押し付けられ、反抗しても突っぱねられ、あまりに惨めなので、『私は家事が大好きなんだ。だから自主的にきつい労働をやってるんだ』と思い込むことにした」と言っていたクライアントの例を紹介していた。

  • 自分の責任でないことで自分を責めることのほうが苦しいのではないか、と思う人も多いだろう。しかし実際は逆で、「自分だけ理不尽な状況に置かれ、適切な助けも得られないばかりに、自分の能力を発揮できないばかりか心を病まされて二次障がいに陥っている』という辛い現実を受け入れるほうが苦しいのだ。それならば、「自分の能力がもとからないせいだ、依存症などになるのは(実際は外的環境のストレスのせいであっても)自分の心が弱いからだ」と思い込むほうが遥かに楽なのである。

    しかしながら、それはつまり自分で「自分には再生の力がない、弱い」と暗示してしまうことでもある。そして、「こんな自分はよほど他人に気を遣わないと社会に受け入れてもらえないと感じる→必要以上に外面(そとづら)が良くなり、言いたいことも我慢する→さらにストレスがたまり依存対象にのめり込む→自分の心が弱いからだと思う→…」という悪循環が生まれる。また、先ほど言った「嫌なことを見ないフリをする」癖もおまけでついてきているので、「本当は嫌なことがあってもニコニコし、このくらい許せない自分は心が狭いと自分の感情を抑圧する→ますますストレスがたまる→依存対象にさらにのめり込んでストレスから目を逸らす」ということも追加される。ゲーム依存などに悩むお子様と一緒にするわけでは決してないが、たまにパチンコやアルコールにのめりこむDV癖のある大人が、人前では異常に外面が良くなる原因もそこにあるのではないかと思う(あらいぴろよ(著)『虐待父がようやく死んだ』より)。さらに、側からみれば「やる前から「自分なんて頑張っても無駄」と、回復することを諦めている」ように取られてしまうのである。


  • そこで、「自分の根底にあるストレス、嫌だったこと」と向き合い、素直にどう思ったかについて考えるプロセスが必要なのである。それによって、「自分の意志が弱いから」という自責と逃避のループから抜け出し、「自分が依存対象にのめり込むストレスの原因はこれだ」と事実を客観的に判断し、「そのすべてに打ち勝たなくてもいいので、ストレスそのものをどのように解決して昇華していくか」が大切なのだと思う。

    私個人の意見ではあるのだが、「依存の原因が怠慢や自分の意思以外のところにある」ということを認めることよりは、実際にその原因を突き詰めていく作業のほうが、心理的なショックは少ないのではないかと思う。自分の人生を何か月も、ましてや何年も、誰かのせいで多大なストレスを抱えさせられ、そのストレスをどうにかするためにみずから依存対象にのめり込んでいたなど、間違いなく行き場のない大きな悔しさが心の中で生まれる(私の場合は主に学校による聴覚過敏への無配慮や、悪気はないがその悩みを矮小化する対応だった)。過去は変えられないし、まして子どもなら、「自分の力でどうしようもないことじゃないか」と絶望してしまうこともあるだろう。しかし、これは逆にチャンスだと思い、周りの大人は支援していかなければならないと思う。自分の力でどうしようもないことが原因ということは、つまり自分のせいで依存症になっていたわけではない、自分は弱かったのではないと気づくきっかけにもなる。また、「どうすればその環境を改善できたか?」「その場にいた人に、心の底では、本当は何と言いたかったのか?」「もし過去の自分に会いに行けるとしたら、今ならなんと声をかけるか?」と考えることで、さらに回復のプロセスは進む。「過去を振り切って未来へ進めなんて耳障りのいいことを言われても、納得できない」という思いがある方は、昔の苦しみは忘れろという世間の言葉を気にせず、存分にその思いを噛み締めるといいと思う。過去に縛られる苦しさを否定することこそ依存の原因であるし、それは心が「やっと依存で誤魔化していた自分の苦しみに、真正面から向き合ってくれたね」と言っている証拠だから。

  • (個人ベーシック閲覧期間:2020年10月9日まで)

  • 【執筆者紹介】北村 碩子(きたむら ひろこ)
    はじめまして。生まれも育ちもずっと香川です。去年の夏から、障害児通所施設の指導員として活躍させていただいております。性格はよく天然と言われます。発達障がいの当事者として、日々関わらせていただいている利用者様からたくさんのことを学んでいます。
    趣味…読書、約束のネバーランド、物書き、犬など。ピアノ弾けますので、お子様のリクエストたまわれます。

    「北村 碩子」執筆記事一覧


タグ

RSS

コメント欄

 投稿はありません

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。