発達支援交流サイト はつけんラボ

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はつけんラボ(研究所)

所長・代表理事挨拶 / 沿革 / 理念

  • 研究所ではその理念を実現すべく
    以下のような活動・事業を多角的に展開しています。
    ※は今後の本格展開を目指した予備的活動

◆発達支援研究所とは?

発達障がい児・者と定型発達者が、お互いに「自分らしさ」を失わずに共に生きていける共生の社会を作る、という目標に向かって、当事者と支援スタッフ、そして研究者がタイアップして課題に取り組んでいく場です。そのような姿勢で「こどもサポート教室」や「就労移行支援アクセスジョブ」をはじめ、全国で発達支援・就労移行支援を通して共生社会実現に取り組むみなさんを支援していきます。

◆発達支援研究所の活動と大切にしていること

「生きる」ことの条件
発達障がい児・者と定型発達者が、お互いに「自分らしさ」を失わずに共に生きていける共生の社会を作る、という目標に向かって、当事者と支援スタッフ、そして研究者がタイアップして課題に取り組んでいく場です。そのような姿勢で「こどもサポート教室」や「就労移行支援アクセスジョブ」をはじめ、全国で発達支援・就労移行支援を通して共生社会実現に取り組むみなさんを支援していきます。

発達障がいという「困難」
人はだれも何かの困難を抱えて生きています。発達障がい者も今の社会でさまざまな困難を抱え、その困難が二次障がいも生み出します。発達障がい者の特性が、定型発達者に合わせて作られた今の社会の仕組みに合わせにくいところがあるためです。

揺れ動く障がい像
発達障がいは、不動の概念ではありません。アスペルガーという概念がDSM-Ⅴ(アメリカ精神医学会の診断基準)からは消えたように、時代によって社会によって「何を障がいと考えるか」「障がいにどう対応すべきか」といった考え方は常に動き続けます。

目指すのは「定型発達」ではない
社会はますます多様化し、人の暮らしも大きく変わり続け、しかも変化は加速しています。定型発達者と発達障がい者の関係も、それと共に変わっていきます。誰もが自分の特性を活かしあい、自分らしい新しい生き方や関係を模索することが大事です。定型発達者の今の社会に合わせるだけの受け身の支援では、これからの新しい生き方を模索しきれません。発達心理学でも「定型発達」とは違う発達の道筋を考える議論が出始めている時代です。

お互いを理解しあう
発達障がい者も定型発達者も、感じ方や考え方の特性が違うため、お互いに相手の振る舞いを理解できずに苦労することがたくさんあります。けれどもここ20年あまり、当事者の方たちの積極的な発言によって、発達障がい者の世界を定型発達者もその「内側」からある程度知り、お互いに語り合えるようになりました。医学でも発達障がいは「治療の対象」としてではなく、ひとつの個性や特性として語られはじめました。当事者自身が自分の言葉で自分を研究する「当事者研究」も進んできています。時代は相手の特性を理解しながらお互いに生きやすい関係を模索する方向に進みつつあります。

自分を活かし、お互いに折り合いをつける
そんな新しい状況の中で幸せに生きるには「どんな能力があるか」ではなく、「持てる力を柔軟にどう生かすか」こそが問題です。定型発達者も発達障がい者も、「世界でたった一人の自分」の特性を活かし、お互いの間に生まれる葛藤を調整し、多様な生き方の間に折り合いをつけながら「自分らしく」生きていく道を生み出していくことが大事です。

いろんな知恵を交差させる
障がいをそのように見たとき、心理学や医学や福祉など、それぞれの専門の狭い目だけでは「共に生きる」という課題に迫りきれません。当事者と支援者と各分野の研究者がお互いの見方や知恵を交流しながら、就労や就労後も視野に、特性に合った生き方の模索について支援し、お互いに生きやすい社会を生み出していくこと、それが研究所のめざす発達支援です。

現場の知恵を研究に、研究の知恵を現場に、社会に
現場や当事者に学びながら研究所が模索していく新しい支援の知恵は、研究者の学会活動にとどまることなく、現場での研修や事例検討会、一般の方への研修や講演などを通して、現場に、社会に還元されていきます。

(一財)発達支援研究所 代表理事 倉橋徒夢

 発達支援研究所(以下、発研と言う)は児童・生徒の教育を40年以上実践しているクラ・ゼミが設立しました。クラ・ゼミは学習塾からスタートし高等学校などの公教育にも携わってきました。
 最近では発達障がいの子どもたちを支援する事業所を全国180以上の地域で運営しています。そこには日々8,000人以上が通い、療育などの支援を受けています。
 また、さまざまな課題を有する人たちの就労を支援する事業所や保育園がクラ・ゼミに加わってきています。そこで蓄積された発達障がいに対する現場での経験や事例は今後の発達支援を考える上で貴重な財産と言えます。

 現代は科学技術の急速な進歩と地球規模で起きる変化が同時に進行する予測不能な時代と言われています。また、現代社会が抱えるさまざまな課題に確信をもって対応することが困難な状況も生じています。発達障がいの分野もそのひとつと言えます。
 これまで、発研はクラ・ゼミグループを中心に活動してきました。しかし今後は、そこで培ってきた豊富な事例や経験を活かして、発達障がいの当事者や家族、発達心理学を含む心理学の研究者、臨床関係者、医学者、学校の教職員、福祉関係者、当事者とともに働く職場の関係者など、多くのみなさまの協力を得ながら発達障がいに関するさまざまな課題を一緒に考えていく所存です。
 そのことで、発達障がい者も定型発達者も、互いにその特質を正しく評価できる社会が実現することに少しでも寄与できればと願っています。

(一財)発達支援研究所  所長 山本登志哉

 まだ自分がだいぶ若い頃の話です。同じように発達相談などを担当していた友人が、こんなことを言いました。「療育に慣れてくるほど、その子のことについて、断定的に言わなくなるよね」
 というわけで「この子は○○だ」「この子には○○をしなければならない」という言いかたは減っていって「この子、○○かもしれないね」「この子には○○をしてみたらどうだろう?」という言いかたに変わっていく。
 すべての人がそうなのではないと思います。中には経験を積むにつれて自信もついて断定的に言うかたもあるかもしれません。ただ、私にはそれは無理です。経験を積むことでとりあえずの今の判断として「○○だろう」と考えて、しっかりその判断を軸に対応することはありますが、それもひとつの可能性に過ぎない、という思いは深まりこそすれなくなることはないのです。
 そういう療育の姿勢は「あいまい」という風にも言えます。「あいまい」という言葉はあまりプラスの意味を持たされないことが多いですが、でもこういう場ではとても大きな意味を持っていると感じます。
「あいまい」な姿勢はある意味中途半端にも見えますし、迷いながらで頼りなくも見えるかもしれません。何より当人も断固とした「安定した」姿勢を取れない分、結構しんどいこともあります。割り切ってしまったほうが楽なのに、という感じにもなる。
 それでその友人はこんな風にも言いました。「療育にはあいまいさに耐える力が必要」

 私は心理学者の端くれということになりますが、人間というのは知れば知るほどなんとも複雑なものだということを感じるようになります。ひとつのことが分かったような気になると、次に分からないことが3つにも4つにも増えます。永遠にその繰り返しです。
 事例検討会ではアドバイザーをやっていますが、自分なりの見立てはありますけれど、参加者のいろんな意見を聞いているとその見かたがまたどんどん変わったり膨らんだりしていきます。だから一方的に「答え」を求められる形は最も避けたいものです。私の中に「正解」はないわけで、私に可能なのはただ「みんなで迷っていろいろな可能性を考えてみる」ための「触媒」になることですし。
 大げさに言えば人生なんてもともとそういうもの。その人なりの考えかたや価値観はありますが、唯一の正解があるわけがありません。自分自身も変化し、周りも変化し、揺れ動く状況の中で、その時々で「こうかもしれないね」とその時々の見立てをしながら、とりあえず前に向かって歩いていく。間違ったと思ったら引き返したり、少し方向を変えてみたり。早く歩いたりじっくり歩いたり。
 療育支援も同じではないでしょうか。「何のための支援?」ということを考えてみると、目の前の目標としては、たとえば「字が上手に書けるように」とか「足し算がうまくできるように」とか、「すぐにキレないように」とか、すごく具体的なテクニックや行動が見えてくるかもしれませんが、でもそれも「何のためにそれができなきゃいけないの?」と考えると、まあ生きていくためだよね。ということでしょう。そして同じ生きていくなら、少しでも自分を活かして楽しく幸せなほうがいい。
 じゃあどうやったら幸せになれるの?と聞かれたって、この質問に「正解」を出せる人がいるでしょうか?たしかに「その人の信念」は聞けることがあるかもしれませんが、その信念が誰にでも当てはまるわけでもないですし、本人だってそのうちに変わるかもしれないし。

 発達障がいへの支援というのも、結局支援をされる側にとっても生きることの一部ですから、同じことなのだろうと思います。別に「正解」があるわけではない。ただ、その時々に迷いながら、そのときに考えた「これがいいんじゃないかな」という方向を目指してみる。
 はつけんラボは、言ってみればそういう人生の一歩一歩をみんなでああでもないこうでもないと言いながら迷いながら進むための場なんだろうと思います。それもまた人生のひとコマです。そのひとコマをひとりで迷うより、いろんな人の迷いかたも参考にしたほうが心強いし、気が付くことや学ぶことも多い。
 何より面白くもある。「障がい」というと、大変とか悲惨とか暗いとか、そういうイメージが付きまといがちですが、でも本当は面白くもあるんです。何も大変さがない人生なんて逆に面白くもない。塩味のない、ただ甘いだけの料理のようなものです。そんなふうにやがてしぶとく上手な迷いかたも身についていくでしょう。そして「あいまいさに耐える力」も育つ。
 この先何が起こるか分からない人生、あいまいな状況の中で、まあそれでもめげることなくちょっとずつでも歩いていくために大事な力がそれなんだろうと思います。

 というわけで、今後も研究所のスタンスや私なりの見かたや考えかたも述べては行きますが、この場所には決まった「答え」はありません。ただ、いろんな経験談や、いろんな見かた・考えかたが集まっています。当事者のかた、家族のかた、支援スタッフのかた、教育関係者、企業の関係者のかた、研究者などなど。そういういろんな見かたに触れて皆さんの中に何かが触発され、皆さんおひとりおひとりの中に「答え」のようなものが生み出されていけばそれでいいと思います。そしてその皆さんにとっての「仮の答え」をまた投稿していただいたりして、交流していくことで、考えるヒントがたまっていけばいいと思います。
ここにあるのは「正解」ではなく、いろんな「可能性」なのです。
 このはつけんラボという「まち」の住民のひとりとして、あるいはときどき立ち寄ってみるさすらい人のひとりとして、そんなみんなの人生のひとコマにあなたもご参加ください。大歓迎です。

所長

山本登志哉

Toshiya Yamamoto

専門:文化発達心理学・法心理学(教育学博士)

学歴:京都大学文学部研究科(心理学)博士課程・北京師範大学研究院(児童心理)博士課程

職歴:奈良女子大学助手・共愛学園前橋国際大学教授・早稲田大学大学院教授・就学前知的障害児施設発達相談員ほか

所属学会:日本発達心理学会・日本教育心理学会・日本質的心理学会・法と心理学会・日本国際理解教育学会

近著:「Child and Money」(共編著:IAP)「Possessions and Money beyond Market Economy」(共著分担執筆:Cambridge University Press)「文化とは何か、どこにあるのか」(単著:新曜社)「ディスコミュニケーションの心理学」(共編著:東大出版会)「供述分析と心理学的合理性」(共著分担執筆:岩波書店)ほか

主席研究員

渡辺忠温

Watanabe Tadaharu

専門:発達心理学・教育心理学(教育学博士)

学歴:東京大学教育学研究科(修士)、北京師範大学心理学院(博士)

職歴:東京理科大学非常勤講師など

所属学会:日本発達心理学会,日本教育心理学会,異文化間教育学会,日本パーソナリティー心理学会,日本自閉症スペクトラム学会 など

近著:渡辺忠温・竹尾和子・渡部朗代(2017). 子どもの自己主張をめぐる母親の育児上の悩みと不安-教育相談における家庭支援に向けた基礎的研究.東京理科大学教職教育研究. 2. 25-33.

2016(平成28)年 4月
一般財団法人 発達支援研究所設立。
障害児通所支援事業所巡回訪問、および一部事業所で指導員の初任者研修を開始。
2016(平成28)年 6月
一部事業所で指導員のテーマ研修・事例研修を開始。
2016(平成28)年 7月
「Web相互支援研修システム」の運用開始。
2016(平成28)年 11月
「一般研究員」の募集。第1回一般研究員会議の開催(12月)。
2017(平成29)年 4月
テーマ研修の隔月定例化。
2017(平成29)年 9月
講演会、保護者交流会の全国実施を開始。
2018(平成30)年 4月
定例研修を全国で開始。日系児童を対象とした事業所に対する研修を開始。
2018(平成30)年 10月
一般財団法人 発達支援研究所の主たる事務所を東京都千代田区に移転。
2019(平成31)年 1月
学校教職員対象とした発達障がい生徒への支援研修開始。
2019(平成31)年 4月
ウェビナーを用いた全国研修の開始。
2019(令和元)年 5月
客員研究員制度設置。
2019(令和元)年 7月
発達障がい交流サイト「はつけんラボ」を開設。