【所長えっせい】②自閉の子どもと一緒に雪を見る
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(この記事は、はつけんラボ会員向けメルマガ「はつけんラボ通信」にて、2019年8月17日に配信されたものです)
「自閉症スペクトラムの症状を『関係』から読み解く:関係発達精神病理学の提唱」(小林隆児2017ミネルヴァ書房)に載っていた5歳1か月の男児の事例で、お母さんの手記の一節です。
「MIU(療育)に通い始めて1年数か月経った2月のある寒い日のことだった。午後からパラパラと雪が降ってきた。そんなとっても寒い日は、子どもとお家でゴロゴロ過ごす。居間の大きな扉の窓に頭をくっつけて仰向けになった私は、自分のほうへ向かってくる雪をしたから見ながら子どもに「こうやってみると面白いよ!」と教えた。「すごいね~、たくさん落ちてくるね~。」って。子どもも「ワァ~!」という感じでふたりでしばらく見入っていた。次の日も窓を開けると雪が降っていた。今度は子どもから仰向けに寝て、昨日と同じ見かたで雪を見ていた。しばらくして私を引っ張り、同じことをしろ(一緒に見ようよ)という感じで誘ってくれた。こういうときのゆっくり流れる時間を過ごしていると、その時の雰囲気、空気がホワンとしていて、お互い穏やかな気持ちになり、言葉なんていらない。ひとつのことを見て、一緒に感じていられることがうれしかった。」
自閉の子は「自分に閉じこもる」という名前も災いして、自分の世界に閉じこもって人との関わりを拒絶するようなイメージでとらえられることがよくあります。たしかにそう感じられる行動もしばしば体験しますよね。でも、お母さんとの関係が改善されるようになってきたころ、この子はこんな風にお母さんと世界を共有し、また次の日も共有しようと働きかけてくるのでした。
自閉の子はほかの人と世界を共有するしかたが定型より苦手です(なぜそうなるのか、についての考察が浜田寿美男先生の講義動画「自閉症を考える」にあります)。でも定型の大人はそんな自閉の子と世界を共有することが苦手です。大人から働きかけられても、どう対応していいか分からずに困惑する子どもは、自分にとって分かりやすい自分の世界をより大事にするようになるのでしょう。それを定型から「こだわり」という名前で呼ばれたとしても、それもその子にとっては大切な時間のひとつなのですね。きっと。
(個人ベーシック閲覧期間:2021年2月23日まで)
【執筆者紹介】山本 登志哉(やまもと としや)
発達支援研究所所長 (プロフィール)
2019年の8月に配信された頃から、とても印象に残っている記事です。
お子さまとお母さまとのあたたかくゆったりとした時間がわたしにも感じられて、穏やかな気持ちになります。
じんべいさん
コメントありがとうございます。
こんなゆったりとあたたかい時間を共有できる、というのが結局は幸せと言うことなのかなと思います。
なにができてもできなくても、そんなことに関係なく、こういう時間を持てる自分でありたいですね。