【今日は何をしようかな?(指導員のひとりごと)】②
「わからない」って…コミュニケーションは大変だ!
(ちいさな子は、どうしよう編)
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中水 香理(なかみず かおり)
前回の投稿を発達支援研究所 所長の山本先生に確認を依頼したときの返信。
「おお、私も緊張しながら2か月に一度大阪に行ってました!…うそ(笑)」
一瞬、動きが止まりましたが…ビッグウェイブに乗ってとめどない笑いが押し寄せてきました。
なんともおちゃめな返信。
…でも、気になる一文に凍りつきました。
「こんな感じの連載でいいですよね?」
へっ?「連載」・・・連載になるの???ええええええぇ!連載?
どっ、どうしよう!と思いながらも、ネタを探してワクワクしていることに…またまた気づいてしまいました。
教育の業界で仕事をして、四半世紀以上になってきました。(お願い:年齢を推測しないで下さい。)
0歳児から87歳のおばぁ様まで、「先生」と呼んでいただけるさまざまな人たちと出会ってきました。
いろいろな年齢層の人との出会いが、療育を行う基礎になっていると感じています。人との関わりのなかで感情が培(つちか)われるのですが、そう簡単なものではないと考えさせられることがあります。
「わかんない」
支援を行う際に必ず出てくることばです。「ちょうど反抗期で、言うことを聞いてくれない。」という声や
「すぐにわがまま言うので困っています。」など、よく聞きます。
どうしても理解できないことが多いのが、発達障がいの反応です。
前回の記事でも書きましたが、そのときの状態や状況を伝えることができないという事実です。
「わからない」、本当にわからないのです。
発達障がいは、脳がシステムエラーを起こしている状態なのです。
つまり「治る病気」ではないのです。
脳内でシステムエラーが起きている場所や状況で「ADHD(注意欠如・多動症)」や「広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)」、「学習障害(LD)」などと分類されていきます。
2~3歳のちいさな子には、何気ない工夫やちょっと手間が必要ですが、コミュニケーションをとるための方法を紹介していきます。
まずは、「話しかける」
子どもの反応を待たず、赤ちゃん言葉や単語で話しかけるのではなく、しっかりと文章で話しかけて欲しいです。ひとりごとのように話すのではなく、聞いてくれていると思って話しましょう。話していると「聞いてくれている?」と感じる瞬間があります。そのときは目線を合わせず、ほほえみながら話し続けてあげましょう。
習慣化してくると、目を合わせてくれることもあります。
根気よく、諦めずに話しかけてあげましょう。「くりかえす」
根気のいる作業ですが、くりかえすことは重要なことです。
塵も積もれば山となる、です。例えば、おもちゃをかたづけること。
おもちゃなどの置く場所は変えないほうがいいです。何度も何度も、いっしょに持っていくことです。
ひとりでできたら、思いっきりほめてあげましょう。できなかったら、いっしょに持っていってあげましょう。
できないことよりも、できる実感を体感させてあげましょう。「ふれあう」
さわってあげましょう。
「どこを?」と思われる方もいるかもしれませんが、て、うで、ひじ、ひざ、ふともも、ふくらはぎ、おなか、ほほ、あたま。
さわられると反応するところがあります。
嫌がるところは避けて下さい。
ふれることに慣れたら、にぎってあげたり、こちょこちょこするなど、変化させてみましょう。
目を合わせるチャンスが来ます。
目が少しでも合えば、少しずつ少しずつ合わせる時間を長くできるようにしていきましょう。
強引に合わせたりしないことが大切です。「うたをうたう」
童謡がいちばん!
幼児番組で流れているような手遊び歌も興味を持ってくれやすいです。
「おと」と「うごき」は、とてもいい刺激です。
必ず、お気に入りのうたができてきます。何度も何度も歌わされるかもしれません。
成長に合わせて、絵描きうたやリズム体操などに発展、進化させていくことをおススメします。絵本の読み聞かせをするのも効果的です。
「合図」
何かをする前やあいさつなど、合図を決めておくことがいいです。
タッチや手をあげる、手をたたくなど、簡単でお互いに同じ動作が確認できることが大切です。
動作を行うときには、いっしょに声を出すことも有効です。
「タッチ!」「はい!」など、短くて出しやすい言葉を選択することをおすすめします。
コミュニケーションをはかることは、なかなかむずかしいです。
ここまで文字で書くと簡単ですが、どれだけの時間と手間がかかるかを考えると根気よく付き合っていかなければいけないことを理解してほしいです。これまで書いてきた中にもところどころに入れていますが、絶対に強要、強制はやめてほしいです。我慢や妥協をするものでもありません。
前回の投稿でも挙げたように、どれだけ笑顔になれるか、なのです。先日、トイレットトレーニングができていないという小学生の保護者さんがいらっしゃいました。3歳で完了するのが普通だと言われているのに、いまだにお漏らししてしまうことを気にされていました。兄弟はスムーズにできて、お漏らしもないのに…ということが大きいように感じました。
どうしても、わかっていても怒ってしまう…いつまで待てば、我慢すればできるようになりますか?と切実な悩みを打ち明けてくれました。私自身も二人の子どもの母です。
わが子がいちばん大切です。子どものことを理解しているはずなのに、「普通」ではないことに得(え)も言われぬ感情に苛(さいな)まれるのではないでしょうか。現在、日本の制度が多様化してきてはいますが、「普通」ではないことは生きていくうえでむずかしいと感じてしまうことが多くあるように思います。だからこそ「普通」にこだわってしまうのではないかと思います。
だからこそ、子どもとのかかわり方やコミュニケーション方法をくりかえし、くりかえし行っていくことや「障がい」によってひきおこされる社会的、生活上の困難な状況に対応できることの数を増やしていくことが大切になってきます。
つねに意識、つねに訓練(トレーニング)していくことが、将来の日常を充実させることにつながってきます。先ほどのトイレットトレーニングの悩みですが、お漏らしはちょこっと出てしまう程度で、においが気になるとのことでした。
小学校の高学年でもおむつが外せない子や、緊張や環境の変化でおねしょやお漏らしをする場合もあることをお話ししました。尿の感覚がわかりにくく、怒られた経験や嫌なイメージがあるような感じがあるとなかなか進まないことが多くあるように思います。
感覚的なことや経験上のイメージなど、思っている以上に「わからない」ことを理解してあげて欲しいと思います。そのうえで
・「言葉の使いかた」
・「話しかけるタイミング」
・「反応の仕かたの見かた」
・「理解度の量りかた」
・「次につながる言葉のかけかた」
を意識できるようにしていただけるとうれしいです。今日の笑顔が、明日の「できる」の橋渡しになることを願って…
今日も何をしようかな?
(個人ベーシック閲覧期間:2019年8月16日まで)
【執筆者紹介】中水 香理(なかみず かおり)
活動地域:関西圏(大阪・京都・奈良・滋賀が中心)
ひとことメッセージ:大阪府内にある児童発達支援事業所で指導員として働く、娘と息子、二人の子どもの母です。息子の大好きなSEKAI NO OWARIのFukaseくんとの出会いが発達障がいを学ぶきっかけになりました。(ミーハーですいません。)
「脳と体と心」、勘違いされることの多いことだからこそ、考えていきたいです。
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