【今日は何をしようかな?(指導員のひとりごと)】⑫
「書く」のがむずかしい?(高橋先生のコメントつき)
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中水 香理(なかみず かおり)
「できるだけ・・・」と想いながら、分かりやすい内容をめざして!コラムを書いていますが、毎回と言っていいほど「なんて書こう・・・」と目の前の壁(本当に自席の前は壁です。)を眺めています。
ことばで伝わりにくいときには、絵や写真を載せるように工夫をしています。
とくに写真は伝わりやすいので、どんな感じになるか、レイアウトをイメージしてから撮影しています。
お母さんに許可いただいて、子どもたちにモデルを頼むこともあります。
私が写真を撮るので、同じ教室の指導員さんにもモデルをお願いします。
まるで「パーツモデル」のように手の出演がばかりで・・・(これからも、協力してね❤)
周りの協力がないと「今日は何をしようかな?」は、出来上がってこないのです。
これからも、ぼちぼちですが書いていきたいと思います。
さて、前回の続き。
文字を「書く」ことについてです。
●音とかたち 「音韻意識」
前回のことを思い出してみてください。「ことば」を知ることからの識字の始まり。
「音韻意識」ことばを「音」として感じ、ものの名前などを理解できるように意識を持たせることから始めていくものでした。
「視覚」「聴覚」、そして「触覚」。
いろんなカラダの感覚を総動員して「文字」を知っていこうというものです。
カラダで「優位」にはたらく感覚を知ることも大切です。音に反応するなら「聴覚」
ものやかたちを探したり、見つけたりするのが得意なら「視覚」小学校や中学校に通うようになると、「聴覚と視覚」のどちらが優位なのかで、学習支援の仕かた(学ぶ方法)について、考えなければいけません。
ただ「勉強させる」だけでは、嫌になるだけです。「音韻意識」の確認をしながら、その子のペースで「興味が持てるようになっているか?」を見ていく必要があります。
興味が持てるようになると、次のステップを始めることができます。
ここで大切なカラダの部位を紹介します。
「手」以前にも感覚過敏などで何度も登場している「手」ですが、今回も「文字」を書くために、最大限使っていきたいと思います。
●字を書くための手
指先トレーニングの「はさみ」についての際に書きましたが、「手」はいろいろな役割を持っています。「にぎる」「ひらく」「つまむ」「はじく」「たたく」「はたく」などなど・・・
動かしかたでいろいろな働きをしてくれます。たくさんの骨の集まりに、張り巡らされた神経と筋肉。
構造的に複雑な造りになっているからこそ、細かな働きをしてくれます。瞬時に反応させ動かしたと思えば、体重を支えたり、ものを長い時間持っていたりすることもできます。
大きな力の出し入れや細かな作業など、「手」は生活に欠かせないカラダの部位です。
この手を、うまく扱えないことが多々あります。
今回の「字」に関してだと「字が書けない」や「字を書くのが下手」など、よく聞きます。えんぴつやクレヨンを持って、運筆の練習をする前に、やってほしいことがあります。
「はさみ」のときを思い出して・・・「ねんど」で遊びましょ!ふつうに遊びませんヨ。
今回のテーマは、何でしたっけ?●「文字」を体感する。
ねんどを使って、さまざまなものをかたち造る練習をします。
下絵にねんどをつけて、平面状にかたちを作っていきます。
立体にする必要性はありません。上手にかたちがつくれるようになれば、文字盤をつかいます。
「音韻」の練習をしながら、文字を見ていきます。「と」を意識させることを例に説明します。
・「とら」のカードを見せ、音の数をおはじきなどで確認させます。
・音の数を文字カードに変換します。
・文字カードの1枚、今回は「と」を意識させたいとします。
「と」をパウチカード(カードをラミネートしたり透明ケースに入れたもの)に置き換えて、ねんどを文字の上に付けていきます。
・ねんどに触れられない場合は、おはじきなどを文字の上にならべてもいいです。
・「と」のかたちが意識できてきたら、ねんどを長く棒状に作ります。
(長さの異なるひもで代用できます。)
・棒状のねんどをパウチカードの「と」をなぞるように、かたちを造らせます。
・パウチカードの上でかたちが造れるようになれば、何も書かれていない粘土板の上で「と」を造らせます。
・造れるようになれば、「と」のねんどを指でなぞるようにしていきます。
・なぞるようになれば、紙に書かれた「と」を指でなぞり、「手」で文字のかたちを感じさせます。
・指は、人差し指だけでなく、5本すべて使います。1本だけでなく、2本や3本指を束にして、文字を感じさせましょう。(左右、両方の手を使いましょう。)・指でなぞれるようになれば、ねんどを板状にして、文字のかたちを点で打っていきます。その文字のかたちに指でしっかり溝ができるように、文字を形づくらせていきます。
(砂などをタッパーウェアに厚さ3㎝くらいに敷きつめて書かせてもいいです)・ねんどの上をなぞることで、指や手の筋力をつけていきます。(筆圧のトレーニング)
(指に抵抗を感じられるようにしてください。)・手や指に力が伝わるようになってから、割りばしなどを使って、ねんどの上をなぞらせます。
・しっかりとねんどに文字が描けるようになれば、ようやくクレヨンや鉛筆でなぞり書きをさせていきます。
・最終段階として、「と」という音を聞いて、「と」が書けるようになれば理想的ですね。
書けても・・・忘れることがあります。
根気よくやっていく必要があります。●「書く」?「書ける」?
学生の時代、英語の単語って、どうやって覚えていました?
何度も何度も・・・書いて覚えた方って、たくさんいるのではないですか?
最近、何度も書いても、単に「作業」をしているだけになってしまうので、覚えるプロセスとしては、いい方法ではないと言われています。
書くよりも「印象」や「きっかけ」を考えることが重要だそうです。
文字のかたち、描きかた、印象、書くときの感覚
私も英単語や漢字は、書くよりも「印象・イメージ」で覚えていました。
書くのが・・・面倒くさかったのと、書くことが課題になっていると覚えるまで意識が向かわなかったように思います。文字を「書く」こと?それとも「書ける」こと?
どちらが目的なのでしょうか?「書く」ことを目的にするなら「作業」「トレーニング」として、たくさん運筆させてあげるのはいいと思います。
ただし「苦痛」を伴うことを想定するほうがいいと思います。今回、紹介している内容は、一例にすぎません。
支援をしていく上で、必要不可欠なプロセスではあると感じています。生活していく上で、必要になる文字の習得。
ちょっとしたきっかけが重要だと思います。
私の教室に小学一年の男の子が通ってきています。
文字にまったく興味を持たなかったのですが、「ゴジラ」がきっかけで文字に触れてくれるようになりました。図書館で本を借りたり、ゴジラの「ゴ」を覚えてくれるようになりました。
先日「ゴジラ」と書いて見せてくれました。
ほかの文字も、ゴジラに関連して「これ何て読むの?」と聞いてくれるようになり、マイペースですが少しずつ、分かり始めています。
「何かを知りたい」と思う意識というのは、人間本来の欲求だと思います。
だからこそ、意識を動かすチカラ「きっかけ」ができる瞬間を見逃さないことです。今日も準備に追われます。
分かりやすく・・・見やすく・・・感じられるように・・・もう12月も後半になりました。
今回でコラムも12回になります。来年もこんな感じで書いていこうかなと考えています。
よい年末年始をお迎えください。
<高橋登先生(発達支援研究所客員研究員)から記事へのコメント>
小学校一年生の授業を見せてもらうことがあります。私が子どものころは給食を食べたらすぐに帰っていましたが、今の一年生は午後も授業があります。5時間目になると体力的にもしんどくなり、身体をくねくねさせたりぼーっと窓の外を見ていた、消しゴムをちぎったり鉛筆を転がしたりしている子どもたちがいます。正直なところ、あまり無理しなくていいよと言ってあげたいのですが、残念ながらそうとばかり言えないのが今の子どもたちのつらいところです。
中には字を書くことにつまづいている子どももいます。一年生用の大きなマス目を使ってもそこからはみ出してしまう、形が整わない文字になってしまうのです。そうした子どもたちは指先が思うように動いていないようです。鍵盤ハーモニカを一本指でしか弾けない、手遊びでキツネの指の形が作れないなど、指先の動き(微細運動と言います)がまだ十分に整っていないのです。ハサミを使ったり、折り紙をしたり、粘土遊びをしたりさまざまな工作をしたり、フィンガーペインティングをしたり等々、指先を使った遊びをもっともっと経験する必要があります。また、同時に、跳んだりはねたりでんぐり返しをしたりなど、身体全体が柔軟に動く(こちらを粗大運動と言います)ことも大切です。字がスムーズに書けるようになるためには、微細運動・粗大運動が十分に発達している必要があります。字が書けるようになることも、そうした身体作りの面から考えてみても良いように思います。
(個人ベーシック閲覧期間:2020年1月15日まで)
中水 香理(なかみず かおり)
活動地域:関西圏(大阪・京都・奈良・滋賀が中心)
ひとことメッセージ:大阪府内にある児童発達支援事業所で指導員として働く、娘と息子、二人の子どもの母です。息子の大好きなSEKAI NO OWARIのFukaseくんとの出会いが発達障がいを学ぶきっかけになりました。(ミーハーですいません。)
「脳と体と心」、勘違いされることの多いことだからこそ、考えていきたいです。
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