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【当事者が語る発達障がい】当事者の視点から考える療育 ②
学習面のサポート(書字)について

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鈴木 領人(すずき りょうと)

(本記事は、2017年10月6日に発行された、一般財団法人発達支援研究所情報誌「緩(ゆるやか)」第5号に掲載された記事を一部を修正したうえで再掲するものです。)

みなさん、こんにちは。鈴木領人です。

  • 今回は2回目ということで、何を書くのがいいのか迷ったのですが、よくある話のほうがイメージ付きやすいかなと思い、今回は「学習面のサポート(書字)」についてお話します。

    さて、まず「勉強」というものについての私の個人的な考えを先にお伝えします。

    「勉強=楽しい」

    これが私の理想でもあり、また勉強というものの本質だと思っています。よく聞くのは、「勉強=つまらない、楽しくない、つらい、やりたくない」

    こういうイメージを持っている人が多いかもしれません。ただ、「勉強」というものの原点に立ち返ったとき、そこに「興味・関心」があり、その原動力があるからこその「自学自習」に繋がると思います。だからこそ、どんなことも「つらく厳しいもの」として行うよりも、「楽しくできること」がなによりも大切で、その経験があるからこそ、「いつかはできる」という気持ちになり難しい問題にも挑戦する意欲に繋(つな)がると思います。「興味を持たせたり」、「自己肯定感をつけて次に挑戦するための意欲を持たせたり」することが、塾とは異なる私たちがすることなのではないかと思っています。

    ただ、嫌なこともやるという我慢する気持ちも大切なことなので、これがすべてとは思いません。

    さて、今回はこの「個人的な考え」を前提としてお話しますので、前回以上に理解ができない方も多いかもしれません。ただ、考えかたに正解というものがない以上、これもひとつの考えかたとしてあるのかもという軽い気持ちで読んでいただけたらと思います。

    学習のやりかたというのは人それぞれだと思います。簡単に分類すると、「書いて覚える派」、「見て覚える派」、「読み聞きで覚える派」、の3つタイプが主流ではないでしょうか。私なりの解釈になりますが、たとえば、

    ・「書いて覚える派」は、ノートなどにひたすら書いて覚えます。形に残るため保護者からも定評がある学習スタイルです。

    メリットは、学習している感が強く、また覚えると長期記憶になりやすいことかと思います。デメリットは、書くことに時間がかかることと、書いていることで満足してしまい、惰性になってしまうことがあります。

    ・「見て覚える派」は、英単語や漢字を見てイメージを頭に作り、その記憶を取り出せる状態まで昇華させたスタイルです。メリットは、見るだけなので場所を選ばないことと短い時間で多くのことを記憶できることにあります。デメリットはノートなどに形が残らないため、学習した内容が本人しかわからないことと、短期記憶になりやすいことがあります。

    ・「読み聞きで覚える派」は、自分の口の動きや発した音などで覚える実践的なスタイルです。メリットは、書くよりは時間がかからず、また見るだけより記憶に残りやすいことです。デメリットは、声に出したりCDなどで音を聞いたりするので、場所などを選ぶことです。

    上記の3つのスタイルですが、私は学生時代にすべて実践しました。というのも、「書かないと覚えないだろ」と両親から言われ続け書いていましたが、どうしても書くのが嫌いで、また指が途中で疲れてしまうということもありました。そして嫌々ながら長い時間をかけて書いたにも関わらず覚えていないという苦痛から、ほかに覚えかたがないのか試行錯誤をしていました。今ではいろいろな覚えかたをその時々の状況に合わせて使えるようになりました。たとえば、テスト直前は見て覚えるスタイルで、英単語はCDを聞きながら声に出す聞き読みスタイルという具合です。ちなみに私のいちばん効率がよい学習スタイルはその複合変形タイプの「見て覚えて、人と話しながら覚える」派です。変な話ですがうろ覚えでアウトプットすることでインプットしやすいみたいです。先ほども言いましたが、人には人それぞれの覚えかたがあります。だからこそ、その人が覚えやすい覚えかた、学習しやすいやりかたを探し検討することがまず第一歩なのではないかと思います。

    利用者のほうを見ると、「書く」ということに関して嫌がる方が多いように感じます。理由はさまざまあると思いますが、私の場合は「鉛筆が苦手」です。どうも軽すぎるみたいで、字を安定して書くことが難しく下手な字が余計にひどくなってしまいます。また先が尖(とが)っているのも好きではありません。これも紙にあたっている面積が少ないため、字が安定しない理由になります。あとは消しゴムをきれいに使えず、濃く書くときれいに消すことができなかったのも嫌な原因でした。

    それでも小学生のときは鉛筆を使わなければならなかったので使っていましたが、よく「ミミズが這(は)ったような字」と言われていました。今考えると、小さく書くことによって字の汚さを分かりづらくすることと、よく字を間違えていたので、消すことを考えてあまり筆圧を加えないように書いていたのかもしれません。

    中学校に入り、嫌いだった鉛筆からシャープペンになりました。中学・高校時は製図用の少々高いものを使用していましたが、上部を噛(か)んでしまう癖があり、壊してしまった記憶があります。どうも考えごとをするときはペンを噛む癖があるようで、これは今でも落ち着きます。これを小学生のときは鉛筆で行っていたため、上部を噛むだけではなく、噛み砕くことがよくあり何本も捨てざるをえない状況があったのを覚えています。

    現在の私ですが、「MONOgraph(モノグラフ)350円+税」というシャープペンシルを使っています。

    ペン先が重くなっており安定しやすく、またペン上部の消しゴムの取り換えができ消しゴムより消しやすいので愛用しています。

    これにより鉛筆問題はある程度落ち着きましたが、新たな問題が発生しました。それは「板書を取ると授業を聞けない」ということでした。字を書くことが人より遅いことはその時点ではまだわかっておらず、なんで周りはノートを書けるのかとても疑問に思っていました。その後、私は中学・高校・大学とノートを取ったことがありません。それは授業を聞くことだけに集中したからです。たとえば英語だと教科書の本文に書きこみ、数学の計算ではいらない紙やルーズリーフを計算用紙にすることで時間短縮を図りました。問題になったのはノート提出でしたが、私の場合はテストができれば関係ないと思っており、提出物の提出率は悪かったですね。実際、この聞きながら書く、という動作を苦手とする人は多いかもしれません。

    今私の事業所に来ている利用者で、これについて悩んでいる生徒がいます。保護者の方はそれについての理解があり、「ノートを取らなくてもいい」と言っていましたが、北海道の高校受験は内申点が重要視されるため、ノート提出は不可欠なので事業所で学校の授業のサポートを行いながら、学校の担当の先生に分からないところを聞く練習、友だちからノートを借りるなどを目標に支援を行っています。許されるのであれば、授業中の黒板の写真を撮りたい気持ちです。これは学校に保護者から働きかけてもらっていますが難しいようです。

    勉強に関して書くことが大切というのをよく聞きます。たしかに大切だと思いますが、たとえば「書く」ことで躓(つまづ)いている場合はどうでしょうか。私は「書く」というのは「勉強」の中での覚えかたの一部だと思います。書くことは今後の生活で大切な部分でもありますが、今はパソコンを使っての代用も可能になりつつあります。文部科学省でもICTを学校教育で使用するための研究も行われております。

    もし「勉強=書く」で躓いているのなら、その躓き部分を取り除き、やりかたをひとつに絞るのではなく、柔軟な視野でその人に合わせた「勉強できる環境」を一緒に見つけ、保護者に理解してもらうことが、私たちのできるサポートなのではないかと思います。

    (※ヨッピーという方がICT教育のモデル校となっている「つくば市立春日学園義務教育学校」に見学しに行ったときのレポートをインターネットに載せていました。【教育×IT】障がいを持つ子どもたちに向けた、PC・タブレットを活用する授業がすごかった

  • 【執筆者紹介】鈴木 領人(すずき りょうと)
    精神障害者手帳3級所持(ADHD)
    経歴:児童指導員、地方公務員、プロ家庭教師、学習塾講師、学習塾教室長
    ひと言:児童指導員として、3年程働いておりました。現在は札幌にある学習塾の教室長として働いております。定型発達者と発達障がい者との橋渡し的な役割が出来ればと思い、療育現場で身につけたことや当事者としての目線を大切に日々の指導をしています

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