はつけんカフェ

【当事者が語る発達障がい】当事者の視点から考える療育 ①
療育教材(図形キューブつみき)について

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鈴木 領人(すずき りょうと)

(本記事は、2017年5月23日に発行された、一般財団法人発達支援研究所情報誌「緩(ゆるやか)」第4号に掲載された記事を一部を修正したうえで再掲するものです。)

みなさん、こんにちは。このたび、こちらのコーナーを担当させていただくこととなりました鈴木領人です。

  • 普段は札幌の事業所に勤務している指導員です。私は発達障がいのADHDという特性を担当医から太鼓判を押され、他に自閉症やアスペルガー症候群の傾向もあるとされており、現在は精神障がい者手帳3級を所持しています。

    そんな私が、当事者だからこそ共感できる療育中にあったことを伝える場として、ここをお借りすることが出来ました。

    ただ、発達障がい者といっても人それぞれ特性が異なります。それこそ発達障がい者の数だけ特性が異なると考えてもいいと思います。なので、ここからの私の話もただ一つの例でしかないことをご了承ください。

    たとえば、積み木で数を数えるのは大丈夫でもおはじきだと数えられない、それに色が有り無しでもまた変わってきます。「たったそれだけで?」と思うかもしれませんが、「たったそれだけ」がその人にとってはとても大切なことだったりします。そういった暗黙の自分ルールに絶対的な依存状態で、それによって心の安定を図っていることがあるかもしれません。

    今回は先ほどの話で出てきました積み木についてお話ししていきます。各校舎には『図形キューブつみき(くもん出版)』というものがあると思います。


  • はじめてこの事業所に来た時に、まずは自分たちでやってみよう、ということで遊んでみたのですが、私の作り方と他の指導員の作り方が違うことに気が付きました。


  • たとえば平面発展18だと、上の赤から右側面を作っていき、周りを埋める様に作って時計回りに周りながら内側を埋めていきます。

    私はこの作り方のほうが安心します。この作り方をする理由は過去の経験からきています。それは自分自身が色や数の見間違えを起しやすいことを知っており、この方法だと次の色とどの面が当たっているかさえ覚えればいいので、楽だからです。

    もちろん作り方には個人差があるので、こういう作り方をしているから、発達障がいだということではありません。ただ、作り方にはその人その人の考え方や過去の経験に基づいて行動しているという事を思ってあげてください。

    さて、このキューブ積み木ですが、今度は立体についてお話ししますが、その前に、私は最初この積み木課題は立体で作ると思っていました。解説をしっかり読めば書いてあったのですけど、読まなかったのが敗因でした。なので、課題7が来た時には「えっ、これできないよ。」と思ったのを懐かしく思います。キューブ積み木の解説には使い方の他にも考え方、指導方法も載っているので、読んでいない方は一度読まれることをお勧めします。



  • 少し話はずれてしまいましたが、課題26についてお話ししたいと思います。

    これについての作り方ですが、これも特殊なようでして、まずは図の左端のものを下から積み上げていき(青→黄→赤)、その後、隣の列を同じ様に積み上げ、まずは見えている面だけを作ります。立体のLのような形です。

  • その後中身を作っていきますが、カードで見えない部分は置き方・色は特に考えずに作り、最終的に見え方が課題カードと同じくなるようにします。

  • これに関しては、「暗黙の了解の理解ができない」に近い考え方と思ってください。また、最初のLを規則通りに作らせられた分、バラバラに作りたいなど、いろいろな感情が爆発します。作っている途中に色を合わせることも考えますし、そうするべきか、とも思いますが、条件に書いていないという絶対的な理由から、そうしてはいけない、もしくはいろいろな色を使うほうが目立ってかっこいいという考えを私はしてしまいます。


  • 作っている本人はいたって真面目で、ルールに則って自分らしさを表現したい、もしくは自分をわかって欲しい、という気持ちをさまざまなところで突発的に表出させます。ただ、毎回表出するわけではなく、そのときのタイミングに関係するので、つねに意味があるわけではありません。自分でも気がつかないことでは、「自分の気持ちを言葉で伝えなくても分かるでしょ」と他人に非言語の意思疎通を求めるのに、相手のことに関しては「言ってくれないとわからない」と都合のよいダブルスタンダードを使用することがあります。これに関しては、無意識・無自覚なことが多いと思いますので、作る工程や出来たものを注意深く観察して、その理由を聞いてみると、その人の気持ちを知る手がかりになるかもしれません。

    『図形キューブつみき』は、作りかた・作り終わってからの動き・色の好み・手の使いかた・目の使いかた・勘違いのしかたと、その人に対してさまざまなことを知れるきっかけになると思います。

    最後になりますが、どのような形であれ、楽しく遊んでもらえることが一番と私は思います。想像して遊ぶことに関しては特に自由に表現していいという安心感が後の成功体験に繋がり、個性の確立にも繋がると考えています。私たちは常識や普通という固定概念に囚われず、自由な発想を育てていけるよう、自由と規則の切り替えに注意しながらその人の代弁者になれるように療育にあたることが必要なのかもしれません。

  • 【執筆者紹介】鈴木 領人(すずき りょうと)
    精神障害者手帳3級所持(ADHD)
    経歴:児童指導員、地方公務員、プロ家庭教師、学習塾講師、学習塾教室長
    ひと言:児童指導員として、3年程働いておりました。現在は札幌にある学習塾の教室長として働いております。定型発達者と発達障がい者との橋渡し的な役割が出来ればと思い、療育現場で身につけたことや当事者としての目線を大切に日々の指導をしています

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  1. まー まー

    積み木で数を数えることはできても、おはじきでは数えられないと聞き、不思議な感じがしました。しかし、それが暗黙の自分ルールであり、心の安定を図っているということから納得できました。暗黙の自分ルールはそれぞれ内容は違くても、一般人も含め誰もが持っているものだと思います。そして、その自分だけのものという感覚が安心感を与えると考えました。ですので、それに対して何か反論したり、意見するのは違うように感じました。その人の持つ感覚、感性を大切にする重要性をこのコラムから学ばせていただきました。