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【当事者が語る発達障がい】当事者の視点から考える療育③
頭の中で起こる物語(ストーリー)について

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鈴木 領人(すずき りょうと)

(本記事は、2018年2月13日に発行された、一般財団法人発達支援研究所情報誌「緩(ゆるやか)」第6号に掲載された記事を一部を修正したうえで再掲するものです。)

 

こんにちは。鈴木領人です。
今回で3回目になります。前回は書字について書かせていただきました。すべての人に対応している考えかたではもちろんないのですが、そういった考えかたがあるというような新たな視点ということについてお伝えしたかった次第です。納得できない部分も多かったかもしれませんが、そうやって考える人もいるということを認識し、自分の尺度だけでなく相手はなぜこう思ったのだろうと考えると意外と面白いのかもしれません。

  • ということで、今回は「思考された物語(ストーリー)の作成について」お話しようと思います。今回これを選ばせてもらったのは、私が受けた発達検査の内容と同じだったことや最近発達検査を受けてきたとおっしゃる利用者が多く、保護者様とのお話に何か役に立つのではないかと思い、このテーマにしました。

    さて、まずはこれをご覧ください。


  • ※宮口幸治(2015)『コグトレ』三輪書店
  • 私の受けた発達検査ではカードになっており、物語の順番をできる限り早く並べその後ストーリーを説明するということを行いました。

    それでは、実際やってみましょう。

    どうでしたか。

    これはストーリーを想像しながら時間概念や論理的思考を断片的な情報から全体を想像する力を見るものであるそうです。それ以外にも話のイメージの取りかたやコミュニケーションでの違和感を見ることもできると思います。

    さて、まずは解答ですが、

    ③→①→④→⑤→②になります。

    「明日は遠足なのに外は雨が降っているので、てるてる坊主を作り、その日は眠り、起きると晴れており、遠足に行く」という物語でした。

    次に私の解答ですが、

    ④→③→①→⑤→②になりました。

    難しいですね。理由を説明すると、始まりは一日の始まりという考えかたに直結するので寝ているところから始まります。起きると雨が降っていました。昼には晴れてほしいのでてるてる坊主を作ることにしました。すると午後には晴れになりました。遊びにいこう。

    という流れになります。

    では、もうひとつの行ってみましょう。


  • ※宮口幸治(2015)『コグトレ』三輪書店
  • さて、これについてですが、先ほど行ったものよりも選択肢が増え、情報量が多くなっていると思います。情報量が多くなることで、頭を整理できない方もいれば、情報量の増加によってヒントを正確に読み取ることができる人もいます。

    私の場合は後者で、たくさんの情報量があると正答を導くことができます。

    今回の問題の解答は、

    ⑧→③→⑦→②→⑤→①→④→⑥

    になります。

    私の場合ですが、たとえば「正解はこっちだよ」と言われても考えを曲げることはできません。どうしてもできないのです。勘違いしがちなのは【解答に納得できないからではない】ということです。問題は【自分の解答に関して自分自身に矛盾点がない】というところにあります。どれだけ解答のほうがよくある物語で適切だと伝えても無駄で、自分の解答に関して致命的なミスを指摘されない限りは考えが変わりません。なので、ふたつ目の問題に関しては、情報量の多さから間違いの解答に対し、矛盾を付けるだけの情報があるので簡単に理解することができるのです。これは頑固やこだわりとして捉えられることが多いと思いますが、私個人としては同じミスをしないために学びたい、という気持ちが強いです。この歳になるまでにいろいろな失敗をしてきました。自己肯定感は低いと思います。だからこそ、明確な正解が欲しくて白黒はっきりできない限りは答えを変えることができないのです。

    実際、こういう問題を利用者に指導するとき私はどうするのかというと、利用者独自の解答に否定はしません。「ほかにもこんな考えかたがあるんだね。」と考えかたの幅を広げようと試みます。たとえどんな確率だろうとそういったことが発生しないと否定できない以上、いろいろな考えかたがあるということを教えたほうが利用者のためになると思うからです。私は自分と他人の考えかたは違うということに繋(つな)げられたことにより、他人の行動を容認できるようになりました。考えかたが正しい・間違っているというのは、その人が属している環境で答えが変わります。だからこそ、私は利用者の考えかたを【正す】という考えかたをできるだけ持たないようにしています。なぜならそれは【正解のない答え】だと思うからです。

  • 【執筆者紹介】鈴木 領人(すずき りょうと)
    精神障害者手帳3級所持(ADHD)
    経歴:児童指導員、地方公務員、プロ家庭教師、学習塾講師、学習塾教室長
    ひと言:児童指導員として、3年程働いておりました。現在は札幌にある学習塾の教室長として働いております。定型発達者と発達障がい者との橋渡し的な役割が出来ればと思い、療育現場で身につけたことや当事者としての目線を大切に日々の指導をしています

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