【ヒオ先生の面白教育実践】③ イライラ爆発 ~ うぅぅ~ わん!(後編)
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ヒオ先生
これ以降、お互いイライラしたときは、「うぅぅ~」と、うなり合って、笑い合うことが、B児と私の儀式になりました。
……・・・………・・・………・・・………
B児: えぇ~、今日も宿題あるの!?
私: えっ!? “普通”でしょ!
- B児: うぅ~... - 私: うぅぅ~... 
- B児: うぅぅ~...うぅぅ~... - 私: うぅぅ~...うぅぅ~...うぅぅ~... - C児: 先生~、“ヘスピーレ”! - 私: (深呼吸をしながら)ふ~...ふぅ~ 
 ……・・・………・・・………・・・………
 
- やがて、新しい儀式も追加されました。 - B児と私がふざけて、うなり合うパフォーマンスをしていると、五年生のC児(軽度の知的障がいとADHD傾向のあるブラジル人)が、「ヘスピーレ(Respire)!」と声を掛けてきます。 - 「ヘスピーレ!」は「呼吸をして!」という意味のポルトガル語です。 - つまり、おとな(?)げのない私たちのやり取りを見たC児は、教師の立場に立って、「はい、深呼吸をして落ち着きましょう」と私たちを諭(さと)しているのです。C児は、私たちにアンガーマネジメントを教える役を演じているわけです。 - もちろん、リアルな教師である私が、もっとおとな(?)になって、イライラを見せずに、広い心でB児と接することも大切。私も意識をすれば多少はできます! たぶん... - でも、B児のこれからの人生を考えると、偏見や悪口をすべて取り除き、イライラする人がいない環境、安全な環境を保障するだけでは、B児の「生き抜く力」は育ちません。 - やがて、社会に出ていくB児は、人との関わりの中で、数多くのネガティブ感情と出合うでしょう。 - 自分とズレる相手にイライラすること。これは人間の弱さで、人間として自然で、ほぼ共通する感情なのかもしれません。 - では、どうすれば、B児のストレス耐性を伸ばし、二次障がいを予防し、人間の弱さを包み込む広い心を育てることができるのでしょうか? - 今回の実践(?)は、今の自分がたどり着いた答えのひとつです。 - 演劇のひとコマのように、イライラを自由に爆発させて、ぶつけ合ってみる。すると、対立を俯瞰(ふかん)し、対立のコミカルな側面を見出し、ぷっと吹き出す、笑える瞬間と出合う。 - そのとき、もしかしたら、お互いに対するネガティブな感情が少し浄化されるのかもしれません。 - さて、ここで、B児の成長について、少しふれてみたいと思います。 - 四年生の初めのころのB児には、イヤなことや、うまく行かないことがあると、トイレに逃げて、トイレにしばらくこもる行動が見られました。 - 「どうしたの?」と聞かれても、B児は黙り込んでしまったり、状況や感情をうまく表現したりすることができません。 - 自尊感情も低く、「できない」「分からない」が口癖。話題からズレる発言も頻繁に見られました。 - でも、B児には、よさや得意なこともたくさんありました。足が速い、力持ち、優しい、困っている人によく気づく、進んで手伝いをする、見通しを持って行動できる... - 学校は、可能な限り、B児のよさや得意を生かし、目標やスモールステップを考え、成功体験ができるように指導してきました。 - B児のよさや成長を称賛するようにしてきました。 - 授業には、対話を取り入れ、思考・判断・表現する力を高めるように努めました。 - 学級行事では、B児が司会をしたり、劇の中心となる役を演じたりする場を設定し、みんなのために自分を生かす体験を積み重ねてきました。 - 半年ぐらいたつと、B児は徐々に自信をつけて、人前で堂々と演じたり、意見発表をしたりするようになりました。 - 的を射た発言も見られるようになりました。 - この間、一度、「『(B児が)学校へ行きたくない!』と言っている」というお母さんからの電話はありましたが... - 四年生の終わりには、B児がトイレに引きこもる行動は、ほぼなくなりました。ネガティブな感情を自由に表現できるようになってきました。 - 五年生になったB児が、ある日、イライラしていました。 - おそらく、私がB児のよくなかったところを容赦なく、ズバッと指摘したからです。 
- ……・・・………・・・………・・・……… 
 私: (笑顔で)
 ねぇ、先生に、イラついているんでしょ。
 怒らないから...先生の悪口、何でも言っていいよ!
 
- B児: 先生のくそ野郎、F〇〇K! うるせぇんだよ。バカ、アホ、死ね! 死ね! - 私: (爆笑) 
 おぉ~! ごめん、ごめん!
 ……・・・………・・・………・・・………- 結構、B児には、イライラがたまっていたようです。英語のFワードまで出てきました! - この翌日、家庭科のお茶実習でのこと。 - B児は、「先生に、お茶を入れたい!」と言って、とっても張り切っていました。 - そして、私のために、心を込めてお茶を入れてくれました。 - とっても、とっても、おいしいお茶でした。 
- (個人ベーシック閲覧期間:2020年2月4日まで) 
- 【執筆者紹介】ヒオ先生 
 「学校教育で、よりよい社会を創る」という野心を持った公立小学校の教師です。通常学級、日本語学級、特別支援学級を担当してきました。専門は異文化間マネジメント。小学校の前は、大学や企業で講師をしていました。
 
- 好奇心が強く、いろんな国の人と関わったり、外国へ行ったり、そこで暮らしたりすることが大好きな地球人。中2までに、海外を含めて7回学校を変わった「転校のスペシャリスト」でもあります。このイラストは偽物っぽいかも。実際の本人は海外に行くと多くの国で、「現地の人」と思ってもらえる特技を持っています。「ヒオ」は、ポルトガル語で「川」という意味。自分の理想の生き方「上善は水のごとし」につながる言葉なので気に入っています。 

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