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【1つの支援-3つの視点】① ある教室での出来事(田窪識・北村碩子)

この記事を読むには6分ほどのお時間がかかります

これから5回に分けて「1つの支援-3つの視点」と題して連載を掲載します。

この連載では、同じ教室の支援員の先生がたの間で起こったある日の支援での出来事について、三人の支援員の先生がたに、その出来事の内容と、その際にそれぞれの先生がたがどのように考えられたのかについて、文章にまとめていただいたものです。また、お互いの文章に対して、お返事の形で視点や考えかたの交流が今回の記事以降も続きます。執筆いただいた先生がたのうち、北村先生と大内先生は、発達障がい当事者のかたです。

その場にいらっしゃった、三人の先生がたの文章からうかがえる同じ出来事についての多様な考えかたは、実際の場面ではお互いの行動のかみ合わなさとして表れることになりますが、あらためて文章化してお互いの理解についてじっくり考えてみるとき、そこに支援員の間での支援の調整の問題だけではなく、当事者―非当事者間の理解の問題などの大きなトピックが見えてくることになります。

(発達支援研究所・渡辺忠温)

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  • 栗林南校で起こった出来事(田窪識)

    ミーティングにて、北村指導員と私が、ある利用者のお子さんの支援を30分ずつ分けるという話をいただきました。割り振りとして前半が北村指導員、後半が私という順番になりました。

    実際の支援が始まって、30分の交代が近づいてきたのでそろそろ交代かなと思い、何度も北村指導員のほうに視線を送りました。しかし、こちらに気づいてくれる気配がなかったため、あえて北村指導員の目につく位置に座り待機することにしました。明らかに目につく場所のため、意識はしてくれるだろうとの考えでの行動でした。

    ただ10分ほど座って待機してもいっこうに交代してくれる様子がないため、困りました。声を掛けようかとも思いましたが、利用者さんが集中して取り組んでいる姿から、声を掛けるよりもこのまま北村指導員のままのほうがよいかと自分で考え、その場を去ることにしました。


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    聞いているように見えるのに(北村碩子)

    いちがいに「時間を守れない」「約束どおりに終われない」ことが主な問題とされる発達障がいですが、具体的にどのような心理なのか、対処法は何なのか、少し私の経験談から考えてみようと思います。なお、これはあくまで私個人の感想であって、万人にあてはめられることではないということを念頭に置いてくださると幸いです。

    まず、私は非常に聴覚からの情報を処理することや、継次処理が苦手です。これは業務柄、メモに書いたりスマホで自分の電子メモに書き込んだりといろいろ工夫しないといけないですし、これからも工夫のしかたを更新しないといけないなと思うのですが、このことが想像力に影響を及ぼしているような気がします。

    ここに勤めてしばらくして気づいたのですが、耳で聞いただけではところどころ要点を虫食いのように忘れてしまい、またその裏に隠された意味に気づかないことがよくあります。それが紙に書かれた聞いた言葉のメモを見ると、じわじわと要点に気づいたり、ほかのこととのつながりに気づいたりするのです。もちろん、書いても気づくことができず、申しわけないこともしばしばですが…。

    このあいだは、「数学の支援〇分、社会の支援〇分」と言われた支援で、私は前半で数学を担当することになったのですが、結局私の支援は支援時間いっぱいを使ってしまい、社会の時間が残っておりませんでした。数学のワークをすべて終わらせなければいけないという思いが強かったのもありますが、なぜこのような約束と違う結果になってしまったのか。

    「最初の〇分」という言葉に込められた意味がどれだけ重いかということを理解していなかったことも大きいです。その子は後半でやる予定の教科に、どのような苦手意識を持っていたのか。数学の範囲のワークをすべて終わらせるよりも、その子が気になっているであろう苦手科目への不安にアプローチしなければならなかったと、今なら分かります。しかし、そのときはとりあえず早く算数を終わらせなければ、という気持ちが先行していました。時間感覚が弱く、〇分までに終わるだろうという見通しが立てられなかったこともあります。

    また、私は小さいころからそうなのですが、本当に「聞いていない」のです。目の前で1対1で話しても、何度も繰り返し話しても、本当に「聞いていない」のです。たとえば、「まず数学をやって」と言われると、「今はどこの範囲だろうか」と考え始め、その末端から、マジカルバナナゲームのように、まったく別の教科のことにまで考えが及んでしまうことがあります。そうなると、目の前で「そのあとは不安のある社会の教科を別の先生に任せて…」という話をちゃんと聞いていませんし、そこに込められた利用者様の困り感や、ほかの先生との予定の折り合いなどもちゃんと考えられていません。ハッと気づいて目の前の話がまだ続いていることに気づいたときには、重要なポイントをいくつか聞き逃している。まとめると、聞く力の弱さ、聞いた話への想像力の弱さ、そして少し時間感覚のなさが、このような結果を招いているのではないかと思っています。発達障がいをお持ちのお子様がいらっしゃる親御様の中には、たとえば、「□□の場所で△△をして、○○の場所で××するよ」などのことを言ったとき、お子様が「□□の場所で××?」と言って、「違うって言ったでしょ!」となった経験がおありではないでしょうか?あれも、まさに「△△。○○の場所で」の部分で、まるっと別のところに意識が向いているか、「□□の」の言語処理をしている最中で、「聞けていない」状況だと思います。


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    【1つの支援-3つの視点】③ 北村さんの文章を読んで(田窪識)

    【1つの支援-3つの視点】④ 発達障がい者の姿~藪の中~(大内雅登)

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