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【対話でひらく発達支援】二次障がいを防ごう④

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大内 雅登(おおうち まさと)

*本記事は、S&D発達支援情報メルマガNo.8(2024年9月26日発行)から転載されたものです。

  •  あるアーティストのライブ会場の設営に行ってきました。これまで経験したことのないものでして、とても面白いものでした。たくさん印象的なことがあったのですが、道具の名前がわからずに困っているバイト達に対して怒っている職員さんは特に心に残っています。
     お前ら、なんで俺の言うことを無視するんだ!
     そんな怒り方を何度かしていました。この方も苦しいんだよね、と思わずにはいられません。
     離れたところにいた私は走り寄って「これですか?」「違う」「これですか?」「違う」「すみません!わかりません」というやりとりを、その人としました。心の中まではわかりませんが、その人が怒号をあげることはなくなりました。
     どういうことか、わかりますね。
     悪意があって答えなかったのではなく、道具の名前がわからないから反応できなかったのだと気づいたわけです。
     何度も怒るのも精神的に苦しいでしょうし、何度も怒られる私たちも気持ちのいいものではありません。私自身がさほどのストレスを感じたわけではないのですが、とりかえず調整はさせてもらいました。
     ここで言う調整とは、能力の不足に気づいてもらい、悪意と感じる必要がないことだと思ってもらったということです。

     学習障がい児の多くは、能力の問題で困ってしまいます。取り組み自体が難しくなると机に向かうことも、教室に入ることもできなくなってしまうこともあります。
     子どもたちからすれば、学習結果や、態度の問題を「勉強をなめている」とか「大人を馬鹿にしている」とかいう解釈にされてはたまりません。悪意のある解釈をされてしまうとますます弁解も難しくなり、心の健康がむしばまれていきます。
     興味のある方は「ハンロンの剃刀」という言葉で調べてみてください。これは、「能力の不足や苦手さが原因と考えられるときには、無理に悪意とかを考えない方がいいよ」という考え方です。
     周辺者がこの考えを自然に持てるようになると、学習に課題のあるお子さんは一気に楽になると思います。二次障がいから遠ざかることができるんですね。
     学習に課題のあるお子さんの中には、実行が難しいという特性をお持ちのこともあるでしょう。やらないことも含め、「一番に悪意から考えること」は避けたいものです。

     これは、保護者の心の健康のためにも必要な視点だと思います。
     どうしてこの先生は、わが子をわかってくれないのだろうか、と感じることは毎日のようにあると思います。
     学校の先生に対して怒りを感じている保護者へ「お母様が求めているものは、お子さんが社会から求められているものと一緒」とお話をさせていただいています。
     どうして先生は私と同じ視点を持たないのだろうか、という構図は、どうしてこの子は他の子と同じ視点を持たないのだろうか、という構図と同じなんですね。
     同じことができないのは仕方がないことで、それを矯正しようと考えるばかりでは衝突が起きてしまうことが多いものです。
     この先生は、私みたいな考え方はできないんだ、と割り切って話をしていくと、場合によってはどこかで解釈の変化が起きてきます。
     この先生は、私とは違う考え方で子どもを考えてくれているんだ、と。
     そうなりますと「ハンロンの剃刀」の解釈が「能力の不足」ではなく、「視点の違い」という言葉に置き換わってきます。
     視点の違いで説明ができるときには、悪意として解釈すべきではない、という感じでしょうか。
     多様性を許容できる生き方を模索することが、学習に困っているお子さんの二次障がいを防ぐ方法のひとつであると考えます。

  • 【執筆者紹介】大内 雅登(おおうち まさと)
    LD専門家庭教師Study&Dialog講師/Care-Media Labo主任研究員/(一財)発達支援研究所客員研究員。自身の経験と、支援現場での実践の双方から、対話を基盤とした支援のあり方を探求している。支援を「わかることから」ではなく、「ともに在ること」から捉え直す実践と言葉の発信を続けている。
    「大内 雅登」執筆記事一覧


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