【今日は何をしようかな?(指導員のひとりごと)】③
「できた!」って言ってみたい
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中水 香理(なかみず かおり)
学生のころから文章を書くのは嫌いではなく、我が子が小さかったころは、寝る前に桃太郎の話などの昔話をして寝かしつけていたのですが、いつのまにか桃太郎が女の子だったり、浦島太郎が海賊だったり・・・子どもたちが寝付くはずもなく、面白おかしく話していたのを思い出していました。
気が付けば、3回目です。
関西弁で言えば、「ぼちぼちやってます」という感じですが、心の中は・・・「必死のパッチ」(関西弁で「一生懸命」の意味)です。
その状況を「ほっほっほ!」というイメージで見守ってくれている山本登志哉先生。
癒し系にも関わらず、何気なく・・・全国のWEB研修で名前を呼ばれて、顔から火が出ました。「今度は名前を呼ばずにお写真を流すようにします」と毒気たっぷりのコメントを返してくれる優しい先生です。
職場の人間関係は、いいと信じています。
ワーカーホリックぎみ?ではないかと言われるほど、仕事は好きですが・・・ゆっくり温泉で養生したいと日々願っています。(誰か~!休ませて・・・)楽しみながら仕事をしていますが、週末の休日になると必ず行くところがあります。それは「100均」。
業者さんによって、意外にいろいろな特徴があるもので「洗濯ばさみ」ひとつとっても、色づかいや形・用途などを考えるだけでも、種類の多さに驚きます。「支援」とは単純な日常生活の中、さまざまな使いかたのできるグッズたちを使って、「できた!」の体験につなげていくことです。
発達障がいを表現するときに出てくる言葉に「不器用」というものがあります。
不器用とは、細かな手先を動かす、使う作業が苦手であることを言います。要領が悪い様(さま)を言うこともあります。スポコン漫画ではありませんが「1に努力、2に努力・・・」で乗り越えられるものではないことも理解していただければと思います。
前回の話ではありませんが、「みんなできているのに・・・」と悩まれている保護者の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。訓練することで緩和されることがあるのも事実ですが、できないことをできるようにするというよりも、できないことを補う方法を身につけるためのもの、であることを理解してほしいのです。
きつい言いかたですが、「できないものはできない」のです。
代わりの方法を考えたり、似たようなやりかたを探したり、簡略化できないかなどをつねに模索したりし続けています。
「できない」とあきらめることはしたくありません。小さな積み重ねは、やがて大きな成功体験につながるからです。
支援で行っている「100均」のグッズを使った手先の訓練をちょっと紹介します。
「指先トレーニング」と呼んでいるものの一例です。
「ポイントシール」と表記されていたり、「丸シール」と呼ばれたりしているものです。
大きさや色、場合によっては柄の入っているものもあります。
小さいものだと、意外にシールを台紙からはがすことが難しい場合があります。
感覚過敏の場合、べたべたすると嫌がることもあるので、シートで作業をさせるのではなく、シールをひとつずつカットしておく工夫も必要になります。
台紙からはずしたシールは、課題シートに貼っていきます。
今回は、初歩レベルバージョンのお花畑。
「好きな色を貼らせる場合」と「設定を伝えて貼る場合」があります。
「設定を伝える場合」の例は、
●タンポポ畑を作りましょう。
この場合は、黄色のシールを選んで貼っていくものになります。
●コスモスの花壇を作りましょう。
この場合は、ピンク色のシールを選び、花の周りを色鉛筆やクレヨンで囲んだり、花壇を書かせるものになります。
●次のレベルは「お花のシール台紙」。
すべて同じ色のシールで貼る場合もあります。
こだわりの強い子どもだと
「こんな色の花はないよ!」とやってくれないこともあり、花の形に貼ることを目的にしているのだと理解させるために、同色で貼るのです。なかなか思うように貼れず、時間がかかることもあり、きれいな色や柄の入ったシールで好きなように貼らせることもあります。
最後までやることが大切なのです。ネットで検索するとたくさんシール台紙の無料サイトを見つけることができます。
2~3歳で興味を持つので、車や動物など、子どもの好みで探されると面白いです。
シール台紙ができるようになると、シールだけでさまざまなものを描くことを始める子どももいます。
ポイントシールのみで絵を描く手法で、作品を制作されている芸術家の方もいらっしゃいます。「たかがシール・・・」とは、なかなか言えません。
いろんなものを描いてみてください。
もうひとつ、「100均」のグッズを使った内容を紹介します。
「カラーマグネット」と「マグネット盤」です。
マグネットの張り付く力は、思った以上に強いものもあります。
色もビビットなものやスケルトンな感じのものもあり、キャラクターシールを貼ってみるのもお勧めします。マグネット盤は、さまざまな大きさがありますが、写真のものは「25㎝×25㎝」です。用途にあわせて使い分けしていただければと思います。
今回は、「5×5」マスのラインを引いて、指示にあわせてマグネットを置いたり、はずしたりする課題を行っていきます。
「指示書」にあわせてマグネットを置いていく課題は、マグネットの数や色の配置を行う子どものレベルで変化させることができます。
「指示書」とまったく違う配置にあるマグネットを正しく置き直すなど、小学校の高学年まで支援の内容として使っています。
手先で行うことを考え、思うようにマグネットを動かすことができると脳にしっかりと刺激を与えることができるのです。置くだけでなく、はずすという逆の作用も良い刺激だと考えています。
マグネットとマグネット盤は、数字や文字の確認にも使えます。
写真のように「1~10」までの数字をランダムにマスに書き込みます。
●数字の並び
数字の順番にマグネットを置いていく課題を出すことで、数字の認識ができているかを確認することができます。
「あいうえお」を書いて、順番に置いていくという応用も効かせることができます。●具体的指示
奇数を青、偶数をピンク、とマグネットの色を指定しておいて、数字に対応する色のマグネットを置いていくように課題を出します。
場合によっては、足し算や引き算の式を見せて、答えをマグネットで置くような課題にも使えます。たかが「100均」のグッズですが、必要な内容にあわせて、ちょっとした創意工夫が多くのものを生み出してくれます。
支援を行うグッズですが、いろいろな年齢の子どもに、多様な使いかたができるようなものを考えるようにしています。
ゆっくりだとしても、できる体験の数が増えていくのであれば、少しでもチャレンジできる環境を作って準備できればと思っています。子どもと一緒に笑っていると、何とも言えない感情になることがあります。
「しあわせ」な感覚?
「うれしい」感情?私と過ごしてくれた時間の中で「共感」できる瞬間、貴重な体感。
「できた!」を共有できたからこそ、次へのパワーの源になる感情。贅沢ですが、もっともっと・・・このような感情を体感したいです。
さあ、支援の時間が近づいてるぞ!
「何をしようかな?」(個人ベーシック閲覧期間:2019年9月1日まで)
中水 香理(なかみず かおり)
活動地域:関西圏(大阪・京都・奈良・滋賀が中心)
ひとことメッセージ:大阪府内にある児童発達支援事業所で指導員として働く、娘と息子、二人の子どもの母です。息子の大好きなSEKAI NO OWARIのFukaseくんとの出会いが発達障がいを学ぶきっかけになりました。(ミーハーですいません。)
「脳と体と心」、勘違いされることの多いことだからこそ、考えていきたいです。
これまでのも含め興味深く読ませていただきました。
「『1に努力、2に努力・・・』で乗り越えられるものではないこと」という部分には特に共感をしましたし、そうさせていないかと改めて身が引き締まる思いでした。
次回も楽しみにしています。必死のパッチでお願いいたします♪
文章拝読いたしました。
自分も年齢を重ねた今。いつも,当時の自分はどうだったか,自分は楽しくできていたことだったのかと自問自答を重ねる毎日です。
今日,中水先生の文章の中で「不器用」という言葉が目にとまりました。
不器用という言葉はいつも自分につきまとう,つきつけられるワードです。
手先の作業や他者より非常に劣っているという自覚さいなまされています。
手先の不器用だけではなく,様々なことから逃げることによって自信がつくはずもなく,だんだん意欲がなくなっていき結局何もできずにへこんでいる自分がいる。
今日,中水先生の文章を拝読して,自分にも通じる手掛かりとなる部分が多々ありました。「できないものはできない」と「できない」とあきらめることはしたくない。小さな積み重ねがやがて大きな成功体験につながるからです。という所は出色だと思います。そして,少しでもチャレンジできる環境を準備しておけることは大切だと思います。
私も過去の子どもたちと接する中で「幸せな感覚」や「うれしい感情」をもつことができたこともありました。ということで,まとまりのない文章になってしまいましたが,私も職場の方に支援されながら過ごしている実感があります。
良好な人間関係を構築しつつ,私たちも一つでも「できた」を実感できる毎日を過ごしていきたいと思います。