【ヒオ先生の面白教育実践】③ イライラ爆発 ~ うぅぅ~ わん!(前編)
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ヒオ先生
3年前の六年生の通常学級でのひとコマ。
……・・・………・・・………・・・………
私: (イライラして)
Aさん、先生が一生懸命、話をしてるんだから、話を聞いてよ!
何度も言ってるよね!
A児: (下を向いたまま、小声で)
話、聞いてるし...
私: (もっとイライラして)
はぁ!? 人の話を聞くときは、話している人のほうを向いて、聞くんだし!A児: ...
……・・・………・・・………・・・………
当時の私は、こんなとき、無視されたような気がして、イライラすることがありました。
「意識をすれば、相手の顔を見て話を聞くことができるのが“普通”」と考えていました。
それに、人の顔を見て話を聞くことは相手に信頼してもらう上で大切なスキル! こう考えて、指導にこだわっていました。
A児は発言も苦手でした。
でも、宿題のひとつであった日記では、自分の好きなことや考えを自由に表現したり、私への質問が書かれていたりしていました。だから、私はいつもA児との日記のやり取りを楽しんでいました。
楽しむゆとりがあったからか、クラスが全員発言を目指していて、A児だけが発言しないときでも、私はイライラすることはありませんでした。
「自信がなくて、発言が苦手な子どもがいるのは“普通”」と考えていたからかもしれませんが、A児が発言できるときがあると大喜びをしていました。
今考えると、A児は、自閉症スペクトラム傾向のある児童でした。
特別支援学級の担任になって、理解のできない体験とじっくり向き合い、障がいについて学ぶにつれて、分かってきたことがあります。
自閉傾向が強い児童の中には、いろんな理由で、アイコンタクトが苦手な児童が多いということ。
そして、「自分とは違う考えかた、感じかた、能力がある」という現実について、私自身が分かったつもりになっていたということ。
でも、じつは全然分かっていなかったということ。
その結果、ときに、子どもに対して、威圧的な態度をとってしまうのかもしれません。とくに、自分のメンタルの状態がよくないときは...ごめんなさい...
さて、1年前の特別支援学級でのひとコマ。
……・・・………・・・………・・・………
私: (少し、イライラして)
Bさん、先生が一生懸命、話をしてるんだから、話を聞いてよ!B児: (下を向いたまま、小声で)
話、聞いてるし...私: (笑顔で)
はぁ!? 人の話を聞くときは、話している人のほうを向いて、聞くんだし。B児: (顔を上げて、私をちらっと見て)
うぅ~...私: (前歯を見せ、鼻面にしわをよせて、B児をにらんで)
うぅぅ~...
B児: (前歯を見せ、鼻面にしわをよせて、私をにらんで、さらに大きな声で)
うぅぅぅ~...私: (前歯を見せ、鼻面にしわをよせて、B児をにらんで、さらに大きな声で)
うぅぅぅ~...
B児: うぅぅ~...うぅぅ~...
私: うぅぅ~...うぅぅ~...わん!
B児: (笑い)
……・・・………・・・………・・・………
B児は、自閉症スペクトラム障がいの四年生の児童で、アイコンタクトが苦手。
3年前と比べて、私自身、「“普通”は人それぞれ」という理解は深まりましたが、実際に“普通”と違うことが起きると、イライラすることはまだ、あります。(笑)
そこで今回は、B児のうなり声のような「うぅ~」に対抗して、怒った犬のように前歯を見せ、鼻面にしわをよせて、B児をにらみつけながら、「うぅぅ~」と、うなってみました。
すると、B児もノリを合わせてきました。
私たちは威嚇し合う2匹の犬のようになって、最後には、「ワン、ワン」と吠(ほ)え合い、ふたりで笑い合いました。
そのとき、何だか、すっきり、爽やかな気分になりました。
<後編に続く>
(個人ベーシック閲覧期間:2020年1月30日まで)
【執筆者紹介】ヒオ先生
「学校教育で、よりよい社会を創る」という野心を持った公立小学校の教師です。通常学級、日本語学級、特別支援学級を担当してきました。専門は異文化間マネジメント。小学校の前は、大学や企業で講師をしていました。
好奇心が強く、いろんな国の人と関わったり、外国へ行ったり、そこで暮らしたりすることが大好きな地球人。中2までに、海外を含めて7回学校を変わった「転校のスペシャリスト」でもあります。このイラストは偽物っぽいかも。実際の本人は海外に行くと多くの国で、「現地の人」と思ってもらえる特技を持っています。「ヒオ」は、ポルトガル語で「川」という意味。自分の理想の生き方「上善は水のごとし」につながる言葉なので気に入っています。
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