【今日は何をしようかな?(指導員のひとりごと)】⑰
いちじく、ニンジン、山椒にシイタケ?
この記事を読むには8分ほどのお時間がかかります
中水 香理(なかみず かおり)
ちいさなころのうっすらした記憶。
私が台所の隅で、体育すわりをして祖母の水仕事を見ながら聞いた詩。
「いちじく、ニンジン、山椒にシイタケ、ゴボウ」
何のことか分からず、無意識に口ずさむことがありました。
「数え歌だね」
大学のときに教育学の教授に聞かれていました。
そのときに「歌」には続きがあることを知りました。食材の歌だと思っていました。
祖母は、私に数を教えてくれていたんだ。
●見て、聞いて、さわって。
学習支援で希望の多い教科、トップ1は算数(数学)です。足し算、引き算、掛け算などの計算問題
時間、長さ、量などの「はかる」ことを目的にする問題生活の中にある数との付き合い方を迷走してしまいがちです。
教えて欲しい理由として・・・「親も苦手なので・・・」が多いです。
私も数学は苦手ですね。正確に答えないと×がついてしまう、何とも言えない緊張感を感じてしまいます。
この感覚が、私は苦手です。「急いで答えを出そうとしないこと、それが数学だよ。」
と塾講師をしていた友人に言われた瞬間、「そうか!答えは後回しにしていいんだ。」算数のはじまりは、数を知ることだと思います。
その前に見た感じが分かるかが重要だと思います。
多いか、少ないか。感覚の違いを見抜くことが大切だと思います。
どうしても、見たり聞いたり、触れることが苦手な子どもたちだから、主観的客観的というのがわかりません。
絵で見せるのではなく、実際にふれたり、重さを感じられるような物質を準備することです。
人間の五官をフル活用です。くらべること。
慌てず、じっくり見たり、さわったりすることで、「ちがう」という感覚を知っていくのです。
ですが・・・
どうしても「ちがう」ということに違和感をおぼえる子どもが多いのです。「分かんない」
この言葉と格闘しないといけません。
以前から言っていますが、本当に「分からない」のだと知ってほしいです。ゆっくりと、何回も何回もくりかえして、「ちがう」を感じてもらいます。
「ちがう」というのは、自分にとって害のあるものやイヤなこと。
くらべることではないので、理解するには時間がかかることもあります。
ゆっくりと、何回も繰り返してあげましょう。多い、少ないが分かると面白がって、いろんなものをくらべ始めます。
どうして多いのか?なんで少ないのか?
しつこく聞いてくることもあるので、付き合ってあげて欲しいです。そこから並べたり、重さや長さをくらべられるようになると「数字」の出番です。
●数字の「1」は、なぁに?
音韻意識のときにやっていたように、数字もねんどなどを使ってみるのもいいかもしれません。数字のかたちを理解させるのなら、数字の歌がいいと思います。
数字の1は、なぁに?工場の煙突♪
数字の2は、なぁに?お池のあひる♬
数字の3は、なぁに?かわいいお耳♩という歌です。数字のかたちをイメージできる物にたとえること。
数字のかたちが想像できる物、つながりやすくしていきます。
歌の物ではなく、その子がイメージしやすい物で歌詞を変えてもいいと思います。
たとえば、数字の1は、なぁに?あかいクレヨン!
数字の2は、なぁに?ブラキオサウルス(草食恐竜の名前)みたいな感じです。
かたちがイメージできてくると次のステップ。
数字を「数(かず)」として理解できるかも問題なので、数字と数を並行するほうがいいかもしれません。
カードなどを使って、ゲーム感覚で確認していきます。動物やキャラクターのカードを10枚用意します。
1から10までのカードも用意します。
マグネットなども用意出来たら、より分かりやすい工夫ができます。
今回はアヒルを使います。
池にアヒルをおいて、何羽いるのかを数字カードを選んでいきます。
アヒルの上にマグネットをおいて数えていきます。数字と実際の数量を目で見て、さわって確認していく。
リアルがいちばん説得力あると思います。
数字は「記号」のように思っている子が多いように感じます。
戦隊ものなどのヒーローは数字を使う場面も多いので、カッコいい記号と勘違いする場合もあるのかもしれません。慣れてくれば、動物やキャラクターを変更して繰り返しやっていきます。
気長に、ゆっくりとすすめていきましょう。次は、数字を書く!
書くときに、変形していくこともあります。
数字の歌のイメージや数字の形を何度もくりかえすこと。運筆をさせることもありますが、目の前にあるものの数を書くほうが、理解が早いようにも感じています。
できれば、たくさん褒めてあげてください。
●増える。減る。
数字という道具がゲットできるか?以前に書いたようにマグネットを使って足し算や引き算の練習をしたりできるようになるなってくると小学校一年生の基本内容となります。
低学年の子どもさんなら、みんなに追いつけそうと喜べるかもしれないですが・・・
そんなに甘くはありません。
「やるとき」と「やらないとき」が出てきます。「もういやだ!できないもん。」
この言葉にイライラされる保護者さんも多く、よく相談されます。
1桁はできるが、2桁以上はむずかしい。
こういう話も本当によく聞きます。「お金」
このアイテムを使います。
関西だから、金勘定にうるさいのは、小さな子ども時代から養われている?
そんなことはありません。「お金が、たくさんあると何でも買える。」
意外とお金に関して、興味というか意識というか、基本的概念的なものがあると感じています。
これに関しては、われらが山本登志哉大先生(?)の著書をお読みください。
私の勤めている教室エリアの支援学校では、店舗の協力のもとで買い物の実践授業が行われています。
生活の中で、大切な感覚のひとつとして行われています。
お金の数えかた。
お金の使いかた。重要な足し算、引き算ではないでしょうか。
お金の計算は、はじめはプリントでお金の絵や写真で何円あるかを数えていきます。
見た目で分かりやすい、1円が整列している状態からスタートします。
次にバラバラになっている状態の物を数える。
10円だけ、1円と10円、1円と5円、1円と5円と10円・・・
見やすいものとバラバラなものを、少しずつ難易度を上げていきます。プリント学習がある程度できたら、模擬通貨を使って数えていきます。
模擬通貨がいくらあるかがわかれば、買い物ごっこへレベルアップです。
財布のお金が、増えたり減ったりすることを実感させます。それがある程度できるようになって、硬貨だけから札を加えた状態へ、できることを増やしていきます。
子どもが分かるように紙に10円が何枚、100円が何枚といったように書き出させ、実数と見た感覚のすり合わせをするほうがいいと思います。
●日常にある数字
学生のときに、数学は社会に出たら必要なのかと問答していました。関数や平方根、いろんな公式
普通に生活することに関しては必要ないかもしれません。でも確実にこの公式たちがあるからこそ、豊かな生活が目の前で展開されているのだと考えています。
いつも言っていますが、「できることが増える」というのは、確実に世の中で生きていけるだけでなく、心が満たされていくことを実感できるということだと思っています。
数字を使えることは、心にゆとりができる一歩かもしれません。
「いちじく、ニンジン、山椒にシイタケ、ゴボウ」
この歌のように、ちょっとした知識の芽生えになるかもしれません。思い出に浸りっている場合じゃないな!
さあ!次は、何を書こうかな。
(個人ベーシック閲覧期間:2020年4月3日まで)
中水 香理(なかみず かおり)
活動地域:関西圏(大阪・京都・奈良・滋賀が中心)
ひとことメッセージ:大阪府内にある児童発達支援事業所で指導員として働く、娘と息子、二人の子どもの母です。息子の大好きなSEKAI NO OWARIのFukaseくんとの出会いが発達障がいを学ぶきっかけになりました。(ミーハーですいません。)
「脳と体と心」、勘違いされることの多いことだからこそ、考えていきたいです。
投稿はありません