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「僕は僕なんだから」ができるまで(対談)③

この動画は今はもう成人となった自閉症のお子さんを育ててこられたお母さんが、発達障がいのお子さんを今育てられているお母さんたちの集まりで、ご自分の経験を語られたことがきっかけで作られました。そして自分の経験がほかの皆さんのお役に立つのなら、というお母さんの思いがこの動画に込められています。元は実際の写真を使った動画でしたが、プライバシーなどに配慮し、イラストで作り直したのが現在の動画「僕は僕なんだから」です。
そのお母さんと、お母さんと共にお子さんを支援してこられたスタッフの方に、この動画のもとになった写真版の動画ができるまでを語り合っていただきました。


  • ■喜びを一緒に喜んでくれる人が親にも必要

    K:でもそういう小さなことでも一緒に喜んでくれる存在が私にもいなければ、私はここまで強くいられていないし、希望を見いだせていなかった。そういう意味ではやっぱりネットワークづくりが絶対に必要な気がします。良き理解者をつくることで親自身も認められ、子どもへの愛情に繋がっていくのですよね。

    ■支援者も支えられる

    Y:私たちは、支援者と保護者ではなく、いつの時点からか、親友っていう感じになったんですよね。私は、Kさんのことを、とても尊敬していたんです、ずっと。こんなに子どもと真剣に向き合って、子どもの成長をこれだけ喜んで、親子関係を育んでいるって本当にすごいなって。

    私も自分の子育てで、子どもとちゃんと向き合っていきたいって思ったきっかけになったのが、やっぱり親子関係の絆をしっかりつくることでした。今やらなければ後悔するって、そういう思いがあって。

    それで子どもが、いじめにあって、この後どうするか…となったときに、「この子と真剣に向き合って支えていこう」って覚悟を決めて。それで子どもがやりたいと言ったことを一緒にやりました。

    その後、私が東京で仕事をしているときに、Kさんが、毎年私に連絡をくれて。たぶんKさんがマメに連絡をくれていなければこの関係も続いてなかった。(笑)

    ■楽しい方がいいよ

    K:子どもの進路で、自分の中では決めてはいてもやっぱりYさんのひと言が欲しくて、迷ったときには必ずYさんにアドバイスをいただいていました。中学に進む前、高校に入る前、Yさんに「どうしよう、この学校とこの学校があって、こうだけど」って言うと、Yさんは決まって笑顔で言うのです。「えー、楽しい方がいいよ」って。「そうだよな、間違ってないんだよな」って、「これで行こう」って背中をポンと押された気がしていました。「大丈夫大丈夫、楽しい方に行きなさい」って笑顔で語るYさんの言葉は、今でも私の支えになっていますね。辛い経験を乗り越えてこられたYさんのメッセージだからこそ真実味があるのです。

    なのであの動画には「楽しくなければ始まらない」というメッセージも伝えたかったんです。

    ■悩む相手に支えられること

    Y:私もけっこういろんなことあったからね~。本当に自分で言うのもなんですけれど、「なんで私にばっかり、次々と、こんなに辛いことが降りかかってくるの??」って言うくらい、いろんなことありましたね。で、それをKさんに話をして、それをKさんが聞いてくれる。だから、あるときからは、本当に支援者とお母さんという関係ではなかったですね。

    K:Yさんに何にも無く平穏であれば、逆に弱音を吐けなかったかもしれない。

    「Yさんでさえ、こんなに日常に困難さを抱えていたんだ」って、思えば思うほど「自分が特別なわけでもないし」、「悩んでいるのは自分だけじゃない」という風に思えたのがすごく大きかった気がします。

    お仕事に対してもつねに向上心があり、「Yさん、今からお勉強するんですか」って。「え?大学?」、「今から?」みたいな感じでいつも驚かされ(笑)、そのYさんのバイタリティに勇気をいただきました。困難なことがありながらも同時進行でさらに自分を磨いていく、高めていくという姿に、私の中で「自分もいつかそういう人になれたら」という憧れの的に、ものすごく刺激になっていたんです。

    ■この狭い世界に閉じこもるのやめよう

    Y:Kさんと私って根本的に似てる。じっとしてられないんですよね。

    K:たぶん(笑)。

    Y:苦しいことがあればあるほど、「絶対それを乗り越えるぞ」っていうのが、なんとなく似てるんですよね。やらないで後悔するよりは、やって後悔する方がいい。以前、Kさんとそんな話をしたことを思い出します。

    K:でも本当に凄いですよ。Yさんが転居され、新しい世界でまた障がい児の勉強に励む、その姿を目にし、自分も「もうこの狭い世界に閉じこもっておくのやめよう」っていう考えが湧き出たんですよ。

    だから息子の進路にしても、普通は多分生まれ育った場所で息子に合う施設や作業所に通わせるとと思うんですけれど、私はYさんの、子どものために、自分の道を開拓しているその姿を見て、「あーそうか、この場所にこだわることはない」という気持ちでいられました。

    なので学校の先生にも「就職就労どうしましょうか?」と面談させていただいたときに、「息子が活かされるところがあるのであれば、県外でもどこでも私は行く気でいます」と言ったら、「そんなふうに言ったお母さんいまだかつていないです」と驚かれました(笑)。

    ■笑顔で生き生きと社会の役に立つ

    K:これまでの道のりを、息子が息子らしく、まあ息子らしいっていうのは笑顔なんですけれど、「息子が笑顔で生き生きと社会の役に立つ」ことを夢みて歩んできたので、「この場所にしかいられない」っていうので息子らしさが活かされないのであれば、私は何を目指してきたのだろう、って思ってしまって。

    結果的に、その思いが実を結び、息子らしさが活きる職場に巡り合うことができました。

    職場のスタッフさんがいい人ばかりなので、息子はつくづく恵まれています。

    Yさんに出会ってなければ、狭い世界で考えていたと思うので、ありがたい気持ちでいっぱいです。

    Y:あとは、子どもの成長もそうなんだけれど、Kさん自身もこれからいろんな意味で活躍していただきたいと思ってるし、十分そういう力を持っている方だと思っているし、お母さんであり、家庭を守る主婦でもあるけれども、やっぱりひとりの女性としても生きていきたいじゃないですか。だからそういう意味で一緒にお仕事できたらいいなって思っています。

    ■ひとりで悩まなくていいよ

    K:私はお母さん方に明るい子育てを伝えたいと言うか、子どもを思えばこそ、お母さんには笑顔でいてほしいですね。「ひとりで悩まなくていいよ」とお母さん方を励ませるのであれば、すごく力になりたいです。自分が経験したことでなければ強く語れないので。
    基本的にYさんと一緒で人前に立つとか、本当にそういうのは苦手だし、できればやりたくないと思ってるんですけれど。でも自分がこれだけ強くしてもらったのは息子に活かされてこそなので、何か恩返しができたらいいなと思っています。子育てはけっして楽ではないのでね。ひとりで悩んでいるお母さんの支えになれたらうれしいですね。

    Y:そうですね。

    K:伝えていけたらなって思いますね。

    ④につづく

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