【今日は何をしようかな?(指導員のひとりごと)】⑤
運動なんてだいきらい?解説編
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中水 香理(なかみず かおり)
ああ、もう5回も連載している・・・すごいな・・・
結構小心者なので、いろいろな人に感想を求めて電話しまくったりしています。
ああしたら・・・こうしたら・・・
そのときはよかったのに、掲載された後に思い出して・・・あああああああぁ後悔する。
今、この文章を読まれている方!
そう、あなたです!もしよかったら、感想を教えてください!(・・・なんてね。)
今回のテーマに戻りましょう。
何気ない日常なのですが、ちょっとしたきっかけがヒントになり、できないことが「できるのではないかな?」と変化したときに、療育が成立することが多くあります。
そのためにも研修は欠かせない業務になります。支援のために、日々学ぶことは大切な業務です。
「WEB研修」といって、全国の仲間と「発達障がいについて」や「ケーススタディ」など、山本登志哉先生から講義いただきます。(いつも凛々しい感じで、とてもかっこいいです。・・・ほんとうですよ!山本先生!)発達支援研究所の先生方が、地方に出向かれての講習会も行っており、直接お話を聞けるチャンスもあり、過去の事例や最新情報まで研修の制度があるので、日々の支援に活かせることも多くあります。
外部の勉強会や研修会にも参加させていただけることもあります。
全国のさまざまな研修も報告書で掲示されたり、事例検討も報告されたりしています。事例の数だけ、さまざまな状態があるのが発達障がいです。
先日、支援を受けにきた子どもを見てびっくり!
おでこと膝に大きな絆創膏を何枚も貼ってきたのです。「何もないところで転んだの。」
小さな子どもにはありがちな光景かも知れません。
気になるのが、おでこのケガです。
前方に転ぶ場合、手が出て体を支えようとします。
それによって、顔や頭を打撲することを防ごうとします。「手」が出なかったのです。
「発達障がい」=「不器用」というものがあります。
この連載の第3回目では、「不器用」とは、細かな手先を動かす、使う作業が苦手であることを言い、要領が悪い様(さま)を言うこともある、と紹介しました。
手先だけでなく、体のバランスや歩く、飛ぶなどの動作がぎこちないことなども「不器用」と言われる所以(ゆえん)かもしれません。身体的には異常は見られないのに、運動を行うとリズム感やバランス感覚が、みんなと同じ動きができないことがある状態を「発達性協調運動障害」と言われることがあります。
少しだけ難しい話を分かりやすく(?)解説します。
幼児期の5歳ころから小学校入学後の7歳前後は、運動機能の発達がいちじるしく分かる時期です。
基本的な動作である「立つ」「座る」「寝る」「歩く」から発展して、「走る」「飛ぶ」「跳ねる」「登る」「投げる」に変化していきます。
発展した動作は、小学校高学年になってくると自転車に乗れたり、逆上がりができたりするだけでなく、「スポーツ」に対応できるようになってきます。野球のキャッチボールを「スポーツ」として楽しめるのも、小学校の3年生前後です。
ボールをグローブで受け取って、投げ返す。
単純なようですが、身体能力のいる作業です。具体的にキャッチボールで考えてみると、脳の運動機能を司る部分がボールを見て、位置を確認しながらグローブで受け取る想定をします。
想定した内容を実行できるか、できなくても何度か行っていると「経験」が修正してくれるシステムが脳に組み込まれています。
グローブで受けたボールを相手に投げ返す場合も、同じように脳が反応し修正を繰り返します。一連の動作を細かく脳が「運動」として把握するものを4つの内容に分けることができます。
・移動
・操作
・協調
・姿勢保持脳が「運動」を把握するとき、基準になるのが「カラダ」です。
・移動
「カラダ」が移動する動作。
歩く、走る、飛ぶ、跳ねる、動作を止めるのもこの仲間に入ります。とくに「走る」ことが苦手に感じるようです。
足の出しかた、手の位置、目線など、タイミング(リズム感)や手足の動かしかたが分からない場合もあると思います。・操作
「カラダ」と道具の位置や動かしかた。
ボールや縄跳びなどを使って、蹴る、投げる、受ける、回すなどの動作です。どんな道具を使うかにもよりますが、道具の位置、道具の動きの予測ができないために手足の動きが止まったり、動き過ぎたりしてしまう場合もあります。
・協調
人の動きを真似たり、合図や音楽にあわせたりして動作を行う。
自分ひとりで行うのではなく、人を介して動作を行うことになります。合図を待って動いたり、同じ動きの真似をしたりするなど人との協力が必要になるので、ひとりで勝手に動くことができないものになります。
・姿勢保持
「カラダ」の位置を把握し、姿勢を崩さないように維持する。
平均台の上を歩いたり、片足で立ち続けたり、体育座りを保ち続けたりするなどの動作です。バランス感覚と言われるものになりますが、同じ姿勢を保つ「気をつけ(立位)」の姿勢を続けることは、カラダの筋力だけでなく、どの方向にカラダを向けているか、や上下、高さの位置を理解しているかという、脳が関係していることも多くあります。
動作の調節がうまくできず、やり過ぎたり止まってしまったり、筋肉の緊張を一定状態で保つことは困難な場合も多く、注意を受ける対象になってしまう場合もあります。
「やりたくない」
このことばが「運動ぎらい」につながっていきます。
何事においても「できる」「やりたい」という気持ちをなくしてしまうことがあります。
「やりたくない」は、運動だけでなく、さまざまなことに対して「やってみたい」という挑戦意欲がわかず、「いやだ」という意識が出てしまいます。
決定的になるのが「スポーツ」を楽しめないことです。最大の壁になるのが、「ルール」。
とくに集団で行うスポーツでは、役割や指示に従うことを余儀なくされます。
「勝手」が許されないのです。発達障がいの場合、周りの状況判断ができないことがあります。
自分のことだけで、いっぱいいっぱいになること。
力の強弱や自分の立ち位置などが分からず、仲間を確認することなどは至難の業(わざ)。カラダの機能をフルに使って自分のことで精一杯なのに、協力だとか団結だとか・・・
「やりたくない」
心からの叫びになることもあります。運動の要素である、人との関わりが重要になる「協調」ができないことになります。
感覚過敏の場合、人の声の強弱や接触、道具の使用ができないとなると「操作」が困難になります。
カラダの力の出し入れや強弱、視線の位置などができなければ「移動」も難しい。
カラダが疲れてしまい「姿勢保持」ができないことも想定できます。悲観的になってしまいます。
ちょっとした工夫が必要になりますが、カラダを動かすことで嫌いを変化させることができます。
「スポーツ」を行う上で重要なのが「社会性」「協調性」など、他の人との関係性を確立させる場であることです。
大人になって、社会に出るための大切な部分であるからこそ訓練したい項目です。幼いときから、徐々にできることを増やしていくためのカラダを使った訓練。
「SST(ソーシャルスキルトレーニンング )」として行っているものなど、次の機会に、どのようなものがあるかを紹介したいと思います。
今回は、たくさんの文字たちが頭を駆け巡った感じがします。
いつもですが、「なにが」できるのか?
自問自答の日々です。経験も必要ですが、毎回「出たとこ勝負!」という感覚もないと支援できません。
そのなかで「笑顔」を見逃さないように、自己満足にならないように・・・今日も何をしようかな?
(個人ベーシック閲覧期間:2019年10月1日まで)
中水 香理(なかみず かおり)
活動地域:関西圏(大阪・京都・奈良・滋賀が中心)
ひとことメッセージ:大阪府内にある児童発達支援事業所で指導員として働く、娘と息子、二人の子どもの母です。息子の大好きなSEKAI NO OWARIのFukaseくんとの出会いが発達障がいを学ぶきっかけになりました。(ミーハーですいません。)
「脳と体と心」、勘違いされることの多いことだからこそ、考えていきたいです。
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