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【ヒオ先生の面白教育実践】① 納豆大キライ不登校宣言

この記事を読むには7分ほどのお時間がかかります

ヒオ先生

特別支援学級でのひとコマ。

  • ……・・・………・・・………・・・………
    私  : 先生は、納豆が、大大大キライ!
    子ども: えっ~!? 私、大スキ!ぼくも!
    私  : 納豆、最悪だし! においも、ねばねばも。納豆の日は、学校、行きたくない!
    子ども: ふ~ん! 先生、金曜日(の給食)、納豆だよ。やった~!
    私  : げっ...金曜日、先生は学校、休むね。よろしく!
    子ども: 先生、悪(わる)っ! そんなのダメだし。
    私  : じゃあ、出張に行く! いいでしょ。
    子ども: ええ――っ!!? 先生、ずるい! ひどい!ブーブー!
    ……・・・………・・・………・・・………


  • このやりとり、子どもたちは終始にこにこの笑顔。じつに、うれしそうにしていました。

  • 実際、納豆が給食に出たとき、私は少し困った顔をして、食べます。全部食べます。
    本当は、納豆は「大大大キライ」ではなく、「できれば食べたくない」というレベルなので...。

    「えっ、ヒオ先生は、誠実じゃないですね!?」
    そうかもしれません。「人間だもの」(笑)。

    その後も、子どもたちは、私をいじってきます。

    ……・・・………・・・………・・・………
    子ども: 先生、今月、20日に納豆が出るよ。
    私  : えっ!? (カレンダーをチェックして)しかも、20日は月曜日か...。日曜日の後だから、20日、先生は絶対に学校を休むべきだね。
    子ども: はぁ? だめっ、そんなの!
    私  : 分かった。じゃあ、納豆を給食からなくす!Let’s アクション!(献立表の前に行って、その中の20日の「なっとうあえ」という言葉の一部を修正テープで削除。「なっとうあえ」とする)ほらね。20日、納豆、出ないみたい。
    子ども: はぁ? 先生が「うあえ」にしちゃったよ。そんなことしていいの? 悪いな、先生!
    ……・・・………・・・………・・・………

    相変わらず、子どもたちは、とっても楽しそうにしています。
    「普通の先生」とは違う、私の言動に違和感を持ちながらも、そのズレが面白いのかもしれません。

    ここで、私の学級の子どもたちのことを少し紹介します。
    まず、偏食傾向が強い子どもがたくさんいます。
    そして、これからお話しするA児とB児は、軽度の知的障害とASD(自閉症スペクトラム障がい)の傾向を持っています。

    A児は、ご飯と牛乳以外、ほとんど口にしません。納豆も食べようとしませんでした。
    B児は、魚が大の苦手。でも、我慢して半分は食べていました。

    B児には、不登校の兆候がありました。
    朝、「学校に行きたくない!」と親に訴えて、家から出たがらないときがありました。とくに、月曜日や長期休みの後、B児はよく休んでいました。
    理由は、親にも、なかなか言わなかったそうです。私たちが、ねばり強く、B児の話を聞くと、

     「友達が『Bちゃん!』と自分の名前をいじってくるのがイヤだから」
     「(肌触りが苦手な)体操服を着たくなくて、体育の授業に出たくないから」
     「宿題をやっていないから」
     「給食に、大キライな魚が出るから!」

    などなど、さまざまな理由がありました。また、B児はゲーム依存症の傾向も少し持っていて、寝る時間が遅くなることがよくあります。

    私がいちばん困ったことは、B児の不登校の兆候を、私が事前に予測できないことでした。
    なぜかというと、学校でのB児は、ネガティブなことをほとんど言わない優等生。それに、B児はネガティブな感情をほとんど出さなかったから。

    「納豆大キライ不登校宣言」。

    この作戦、じつは、とくにB児の成長を願って、私が実践したことなのです。
    いや、半分は意図的ですが、もう半分は、子どもたちとのじゃれ合いが楽しくてしたことです。

    私がどんな願いと意図を持っていたかというと...

    まず、教師の「不登校宣言パフォーマンス」を見て、B児に同じような心境の自分を客観視(メタ認知)してほしい、そして、メタ認知力をつけてほしいと思いました。
    次に、「もっと開放的になって、悪態をついて、ネガティブ感情を出して、振る舞っていいんだ」という安心感をB児に、持ってほしかったのです。
    また、「人間には、がんばる面も、そうでない面も両方あるのが自然である」と理解したり、自分のあるがまま受け入れたりしてほしいって、思っていました。
    誠実で純なB児は、自分の中のネガティブな面を、どこか「ダメ」と責めている、自己否定をしているような気がしていたので。

    さらに、私のパフォーマンスを行動モデルとして、ネガティブな感情の意思表示のしかたを学んでほしい、ツッコミを入れたり、いじり合ったりして、子どもたちとともに笑い合う対等でオープンな関係をつくりたいという思いもありました。

    何だか私が欲張りにも聞こえますね。

    半分は実践前に計画的に考えていたことですが、もう半分は実践後に価値づけたものなので、このような長い話になりました。

    さて、子どもたちは成長しているのでしょうか?
    実践を始めてから2か月たった、ある日、A児のお母さんがうれしそうに私に話をしてくれました。

     「先生、びっくり! 納豆を絶対に食べなかったA児が、納豆を少し食べ始めたのよ。理由は、『先生もがんばっているから』だって」

    私は少し複雑な気持ちになりました。(笑)

    B児の方は、不登校の兆候が、だんだんとなくなってきました。

    もちろん、「納豆大キライ不登校宣言」以外にも、いろいろな手立てを講じてきたり、家庭やほかの先生方のサポート、本人の努力があったりした成果だと思っています。

    次回、お話ができればと思っていますが、B児は自分なりの面白い方法で、自分のネガティブ感情を自由に表現できるようになったのです。

    3年前の通常学級でのひとコマ。

    ……・・・………・・・………・・・………
    子ども: 今日の給食、レバーじゃん。うざっ!
    私  : そんなことを言いません! 楽しみにしている人もいるし、みんなの雰囲気を悪くする権利は、あなたにはない!
    ……・・・………・・・………・・・………

    別のひとコマ。

    ……・・・………・・・………・・・………
    子ども: 先生、学校に行きたくないときって、あるでしょ?
    私  : はぁ? 1年間、みんなが学校に通うのに、約55万円の税金が使われています。学校に行くのは、子どもたちのお仕事、子どもたちの義務です!
    ……・・・………・・・………・・・………

    子どもたちの感情を受け止めず、タイミングを考えずに、正論を振りかざしていたころの自分。

    このころと比べて、今の自分は成長したのかな?

    少しだけ、メタ認知力がついた気はしています。

  • (個人ベーシック閲覧期間:2019年9月9日まで)

  • 【執筆者紹介】ヒオ先生
    「学校教育で、よりよい社会を創る」という野心を持った公立小学校の教師です。通常学級、日本語学級、特別支援学級を担当してきました。専門は異文化間マネジメント。小学校の前は、大学や企業で講師をしていました。


  • 好奇心が強く、いろんな国の人と関わったり、外国へ行ったり、そこで暮らしたりすることが大好きな地球人。中2までに、海外を含めて7回学校を変わった「転校のスペシャリスト」でもあります。このイラストは偽物っぽいかも。実際の本人は海外に行くと多くの国で、「現地の人」と思ってもらえる特技を持っています。「ヒオ」は、ポルトガル語で「川」という意味。自分の理想の生き方「上善は水のごとし」につながる言葉なので気に入っています。

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