発達支援交流サイト はつけんラボ

                 お問合せ   会員登録

はつけんカフェ

【今日は何をしようかな?(指導員のひとりごと)】⑮「1+1」の答えをおしえますか?

この記事を読むには8分ほどのお時間がかかります

中水 香理(なかみず かおり)

唐突ですいません・・・豆まきしてますか?
まだまだ寒いですが、「立春」を迎えると小春日和がうれしくなります。

関西では奈良の東大寺二月堂のお水取りが終わると「春」が来ると言われています。
子どものころ、母方の祖母に聞かされました。

  • 受験も大詰めを向かえ、「春」を待つ思いは人それぞれだと思います。

    春になれば・・・
    進学、進級で新しい環境になっていきます。

    「新しい環境」・・・ああああああああぁ!悩ましい季節がやってくる。

    クラス替え、教室変更、担任の先生が変わる!!
    準備をこのくらいの時期から始めないと、不安で押しつぶされそうになる子どもが出てくる季節です。

    勉強も・・・むずかしくなるよなぁ。

    ●できないことは、できない?
    私の仕事は、主に「学習支援」を行うことです。

    支援の方法はさまざまで、障がいや心理状態に合わせて「個人」レベルを踏まえて考え、療育、指導を行っていきます。

    その中でも「学び」をメインに療育を行うものが、学習支援です。

    各教室には特徴があると思いますが、私の教室では3分の1が中学生以上という比率で、保護者からの希望として「勉強ができるようにして欲しい」というものがほとんどです。

    支援学校の中等部の子もいれば、中学校で支援級、通級指導を受けながら高校受験を目指す子もいます。

    今までの経験上、本当に困ることがあります。
    提出課題(ワークやプリント)の進めかたです。

    中間・期末テストなどの期間試験に合わせて、期限までに提出できれば課題点がいただけるシステムがあります。
    学習が進む速さによって、課題範囲が設定され、復習的に取りくむことが大半です。

    各教科ページ数で言うと10~20ページ課題になることも多くあります。
    主要五教科(国語・英語・数学・理科・社会)だけで考えても、量は半端ないものになります。

    それを約2週間弱で仕上げるのです。

  • さあ!質問です。
    期限内にできるでしょうか?

    普通に考えて、発達障がいのある子には相当難しい課題です。
    でも・・・しないといけないのです。

    では、どうするのか?

    「答えを写してきなさい。」


  •  
  • ●「学ぶこと」は、耐え忍ぶこと
    療育をはじめたころ、保護者からの要望で「宿題をさせて欲しい」というものがありました。

    自宅では、やってくれない。
    子どもが「めんどくさい」「勉強がイヤ!」だから、やらせてほしい。

    永遠のテーマ・・・宿題。

    宿題をスムーズにできる子は、よっぽど出された課題が魅力的でない限り、少数派と言ってもいいと思います。

    たった1枚のプリントができない。
    5分でできるのに・・・忘れものになってしまう。

    「宿題」をする意味が分からないのです。
    それでは、宿題は、なぜ出されるのでしょうか?

    ・家庭での学習時間の確保や習慣づけのためという名目。
    ・学力の向上や学ぶことへの興味づけ。
    ・学習などの継続力をやしなう。

    理由としては、こんな感じでしょうか。

    実際、家庭学習において成績上位者は平日に1時間30分程度行っているというデータはあります。

    ですが、「塾」という存在をお忘れではありませんか?
    学校での宿題は、学校でやってしまって、家では塾の宿題をやっているというものが真相のようです。
    学校での勉強にプラス「塾」での学習と追加課題への対応で家庭学習を行う。

    子どもに対してお母さんがかならず言う言葉。
    「宿題、できてる?」

    宿題・・・ほんとうに我慢くらべしているよう
    「忍耐力」の強化に使われているように感じます。

    ●頭を使う?かんがえる力って?
    話を戻しましょう。

    私の所属している教室にくる子どもの大半は、学習能力に難のある子です。
    今回は「文字」の学習に関して見ていきます。


  • 前にも紹介したように、いろいろな感覚を利用して文字に慣れてもらうこと、徐々にイメージできるようにすること、分かるような工夫をすることなど、その子に応じた内容で識字トレーニングを行っています。

    英語圏の子どもよりも、日本の子どもに文字の習得が難しいのは、「ひらがな」「カタカナ」「漢字」に加えて、小学校での英語教育開始にあわせて「アルファベット」の4種類の文字を習得しなければならないことも要因でないかと言われています。

  • 学習しなければいけない文字が多いことが、学習障がいの発見が遅れる要因になっていると言われる場合もあります。

    英語圏の読字能力について学習障がいと診断される発症頻度は、3~12%と言われていますが、日本では確実にコレ!といえるデータは、じつは、無いのです。

    文部科学省のデータから2002年に小学校・中学校で学習に関して著しく困難であると言える児童生徒の調査が行われ 、全体の3.3%存在する(学習面のみに困難がある場合)と報告されていますが、「読める」「書ける」だけの調査ではないので、何が原因で「困難」なのかは不明です。

    文字に関して習得が難しい場合の学習障がいを「発達性ディスレクシア」と呼ばれています。
    音韻のトレーニングを行うことがいいとされています。(音韻意識などについては、過去の投稿内容をご確認ください。)

    「読む」「書く」ことが、困難な場合
    中学生の中間・期末テスト前の大量の提出課題をやり切れるか・・・

    「答えを写してきなさい。」
    この指示に従うしかないのです。

    「読む」ことがつらいのに・・・答えを探して、何と書いてあるかを見ていく。
    「書く」ことがつらいのに・・・答えを書き写さなくてはいけない。

  • テスト前の事前学習になるわけないのです。

    ちょっとだけでも「分かる」につながるように工夫をします。
    「できない」と決めつけないように、
    「前もって」をすることと「くりかえし」をできるかです。

    支援の時間に提出課題の数問ずつ、解いていく許可を学校側に交渉をすることがあります。
    答えを写させる場合にも、説明しながら写させたり、写すこと自体を課題としたりもします。


  • 考えようとする時間を1分でも作り出す。

    「できない」「分からない」を連呼することもあります。
    すんごい顔して「できた」と言ってくるので、笑ってしまうこともたくさんあります。

    「できた」のための創意工夫
    それ以上に「あきらめが悪い」といったところかもしれません。

    ●学習支援って?
    私が行っている研修会で、かならず言う言葉があります。

    指導員は「教育者」ではありません。
    ものごとを「教える」のではありません。
    指導員は「支援」を行うことができるかです。
    ひとつでも「できる」ことを増やしてあげるように「助ける」ことが重要です。

    保護者の方にも「今日は数学の文字式を教えました。」とは言いません。
    「数学の文字式の問題が、ひとつできました。」と伝えます。

    「たったひとつですか?」と落胆されますが、「自力でひとつ正解が出せたのは、今まで一度もなかったので、スゴイことです。」と話しながら解いていく経緯を説明すると、笑顔で「よかった」と答えてくれます。

    100点を目指すよりも、1点ずつの積み重ねが大切です。

    今回は序章!
    次回から、どのように中学生を指導しているかを書いていこうと思います。

    学年末テストが近づいてくるよ・・・
    私も事前勉強しないといけないよな。

    「できた」の顔をみるために。

  • (個人ベーシック閲覧期間:2020年3月5日まで)

  • 中水 香理(なかみず かおり)

    活動地域:関西圏(大阪・京都・奈良・滋賀が中心)

    ひとことメッセージ:大阪府内にある児童発達支援事業所で指導員として働く、娘と息子、二人の子どもの母です。息子の大好きなSEKAI NO OWARIのFukaseくんとの出会いが発達障がいを学ぶきっかけになりました。(ミーハーですいません。)

    「脳と体と心」、勘違いされることの多いことだからこそ、考えていきたいです。

    (「中水 香理」執筆記事一覧)


  •  
タグ

RSS

コメント欄

 投稿はありません

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。