【今日は何をしようかな?(指導員のひとりごと)】⑱
はじめの一歩、また一歩
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中水 香理(なかみず かおり)
最近、職場で原稿を書くことが少なくなっています。
息子の勉強机でPCに向かっていることのほうが多いです。
野球の道具、コンサートグッズ、最近流行りの漫画(何とかの刃とか・・・)。
これらのものたちと一線を画して掲げられているタオルがあります。
でーんと赤字で「誠」と書かれています。
将来を左右する大きなきっかけになった集団の規則や隊長名の入ったタオル。なんとか「大学生」になりました。
日本史を専攻して、教員免許を目指すらしいです。それはいいのですが・・・
入学式は中止、オリエンテーションも学部学科別で行われました。息子に「4月から大学に何回行った?」と聞くと「1回」と返ってきました。
たった1回!
近隣の大学で感染者が出たこともあり、大学の対応として注意喚起と予防のために立ち入り禁止になっています。マジかァ。
前期の授業とか、単位とかは?「ああ、PCとスマホがあれば、授業受けることできるから。」
おおおおおおおおおお!最新じゃん。
息子は遠隔での講義やSNSを使って講師の先生とやりとりをしていました。〇海外はどうなっているの?
今年の2月に投稿した「覚える?分かる?異国のことば」の回でアメリカの教育事情を書かせていただきました。「ホームスクーリング」の制度です。
ホームスクーリングが認められるのは、小学1年から高校3年にあたる12年間。年間で230万人以上が家庭でオンラインや家庭教師を依頼して授業を受けていると紹介させていただきました。
前回は小学校以下の基本的な教育制度でしたので、小中高校を紹介します。
ちょっと面倒なのが、合衆国であることです。
つまり「州」が主体になっていることが多く、義務教育の期間も6才~16才の州と18才までの州があります。
場合によっては幼稚園(5才)から義務教育とされていることもあります。もっと複雑なのが、初等教育期間(小学校)が、四年生までと六年生までがあり、場合によっては五年生で卒業できる場合もあるということです。
中等教育は中学高校の期間です。
基本中学は3年、高校は3~4年になります。
中高一貫校は通年で6年間とされています。
スコア(成績)が良く、単位取得率が良ければ「飛び級」制度を活用できます。高校受験は、「ありません!」
ある意味いいのですが、私立など一部高校ではスコア重視の学校もあるので、簡単にいい高校には入れないシステムには、なっています。
9月入学で「セメスター制(前後期)」もしくは「クォーター制(4学期)」で学期運営させています。
ほとんどが「セメスター制」です。
日本でも、大学や専門学校で取り入れているところも多いです。
9月始まり6月終わり。
6月以降サマースクールなどで履修内容の再取組み、つまり補習を受けることができるのです。高校までが義務教育なので、受験は大学に行きたい場合のみとなります。
「意外と楽そう・・・」と思われるかもしれませんが、スコアに関してはシビアな現実があり、容赦なく落第があります。
それでは、本題に戻ります。
〇入学時期と年齢
海外での学校制度は気候、風土や交通事情、安全対策、宗教上の制度も影響しているようです。学年の設定なのですが複雑です。
通学もしくは自宅で学習を行うことに関わらず、一般的なことをお話しします。まずはアメリカについてです。
9月にアカデミックイヤーを迎える幼稚園児(6才児)という規定があります。国で設定されているのではなく、州の制度(法律)よって違っており、微妙なところもあります。
9月に小学校に上がる学年の9月~8月の誕生月期間が主流ですが、1月~12月や12月~11月に誕生した子どもの場合もあるのです。イギリスは、9月~8月誕生期間で9月入学です。
このように生まれた年の9月誕生以降9月入学の国が結構あります。フランスは1月~12月の誕生期間で9月入学です。
韓国は、1月~12月の誕生期間で3月入学です。オーストラリアは複雑です。
基本は学校の開設時期が1月もしくは2月から始まり12月終了です。
入学月については州ごとの制度なので、国の指針で決まってはいません。
入学時期は、1月~・5月~・8月~・9月~と違います。
学習単位制度が定められているので、カリキュラム内容を考えて開始時期を設定できるということです。
つまり、子どもの成長状態に合わせて学校に通わせる開始時期を保護者が決めることができるそうです。
ほとんどの子が、1月から通うことが多いようです。4月入学・・・変更?
日本も、どうなるのかな?〇「通学」と「自宅」
小学校の入学に合わせて、学習環境の選択をします。
「通学」するのか「自宅」で行うのかです。広大なアメリカ。
西と東では時差が発生するほどの広さです。
銃社会であり、治安に関して(10年前より安全らしい)、不安を感じている人も多いのが実情です。身体的理由(病気や障がい)や金銭面、宗教上の問題などによってさまざまな教育を受ける方法を選択できます。
基本、学費は無料ですが、私立や専攻課程で費用を請求されることがあります。アメリカでは「数学」「英語」の学力を、ある一定基準に達するように指導を行ってくれます。
いい面もありますが、いまだに問題化しているのが、教育格差。
とくに「英語」は移民国家だからこそ、力を入れているように思いますが、識字率は思うようになっていないようにも思います。自宅学習「ホームスクーリング」でも、最低限の学習レベルに達することを国や州から要求されています。
学習(教科の習得)方法はさまざまで、家庭教師をお願いしている場合でも、オンライン授業は頻繁に行われているそうです。〇「ホームスクーリング」って誰でもできるの?
簡単にいうと「ホームスクーリング」とは「自宅学習」ですが、ただ単にお家で勉強するというものではないのです。州によって規定は違いますが、保護者が家庭で実施する授業計画を指定の教育委員会に提出し許可を申請します。
許可されても、次年度もホームスクーリングを希望する場合、前年度の授業計画が達成されたことを証明しなければならないのです。達成度を確認するために「学力達成度試験」を実施している州がほとんどです。
卒業までホームスクーリングというわけではない場合もあります。
1~3か月のような短期間、半年~1年だけの長期間ということも出来ますし、美術や音楽、体育は学校で受講して、数学や英語のような学習内容は自宅で行うなどと変則利用していることもあるそうです。学校外での活動もしなければならないのも特徴です。
「ボランティア活動」地域によっては、コミュニティー活動も義務化されている場合もあります。
ボーイ(ガール)スカウトや教会での奉仕活動、スポーツクラブへの所属なども推奨されています。
ホームスクーリングだけだと養われない社会性やコミュニケーションスキルのために参加が求められているのです。どの家庭でも、お母さんが教師の役割を果たしていますが、教材が豊富であることで対応できてしまいます。
書店で教科書や参考書を購入するのはもちろん、ネットで学習サイトが豊富にあるので選び放題です。
ただし、ほとんどが有料です。家族で教師の役割ができない場合は、家庭教師を雇うことや(州によっては)学校から講師の派遣を依頼できるそうです。
ネット環境が整っていれば、学校で行われている授業を遠隔で受講できる場合もあるそうです。
遠隔授業をメインに行っている企業などもあり、ビジネス展開されている場合もあります。
先生と生徒が1対1のパターンや先生ひとりに対して複数で受講するタイプもあるそうです。学校へ登校するよりも手厚く見てもらえることもあり、大学への進学を目的に中学高校に上がる学年になるとホームスクーリングに切り替える率が高くなるそうです。
「通学」よりも「自宅」で学習するほうが優秀な生徒が多いという事実も、年々増加傾向にある理由だと言われています。
〇未来に向けて
今回、海外在住の友人たちに話を聞かせてもらいました。世界的に見ても「ホームスクーリング」を実施している国が多くヨーロッパでも普及していますが、条件は国により違いがあります。
成績を確定するために、試験は学校で行うことや子どもの身体的心理的要件が満たされなければ認められない場合も多いです。
「不登校」や「病気」「障がい」が認められる理由の上位です。「発達障がい」の子どもも例外なくホームスクーリングを行っていると聞きました。
遠隔で支援が行われることが「スタンダード」になる日も遠くないと感じました。
こんな感じで、今回はおしまいです。
手洗い、うがいをしなくちゃ!
(個人ベーシック閲覧期間:2020年6月27日まで)
中水 香理(なかみず かおり)
活動地域:関西圏(大阪・京都・奈良・滋賀が中心)
ひとことメッセージ:大阪府内にある児童発達支援事業所で指導員として働く、娘と息子、二人の子どもの母です。息子の大好きなSEKAI NO OWARIのFukaseくんとの出会いが発達障がいを学ぶきっかけになりました。(ミーハーですいません。)
「脳と体と心」、勘違いされることの多いことだからこそ、考えていきたいです。
私も大学生で、前期はオンライン授業になっていて始めは戸惑いましたが、今は慣れてきています。
今回の経験は稀で貴重なことですが、外国ではホームスクーリングが定着していて、しかもそちらのほうが優秀な子が多いというのには驚きました。確かに、自宅学習だと自分のペースで勉強ができ、主体的に取り組まないと課題が進まないので、それが成績を伸ばす要因になっているのかなと思いました。
今までは、学校や職場に行って学習や仕事をすることが当たり前だと思っていました。しかし、学ぶ形はさまざまであることを知り、自分に合った学びかたを探っていきたいと考えるきっかけになりました。