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【アンフェアを生きる】③ 毒親

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北村 碩子(きたむら ひろこ)

私は激怒した。

ネットのコミュニケーションツールで知り合った女の子の母親の話を聞いたからである。

  • その女の子は、自分の志望する学部を目指していた。ところが、その毒母が「あんたは頭が悪いから絶対無理」と、可能性すら与えてくれなかったのである。その子の妹は、どんな突飛な進路でも自由に選ばせてやるくせに、である。もう大きいのに、スマホをチェックされる。殴る蹴る、寒空の下に放り出されることもあるという。まさに極悪非道、きょうだい差別の猛毒母以外の呼び名が思いつかないが、この毒母、外面(そとづら)は完璧だそうである。そのため、母性神話に取り憑かれた級友は、彼女が殴られて痣(あざ)を作っていても「ママのことを悪く言っちゃダメじゃん」などとお節介を焼き、進路相談で毎回意見の食い違う母娘を先生は「お母さんとちゃんと話し合わなきゃダメじゃない」と追い討ちをかけるのだそうである。

    結局彼女は、母親の妨害で、別の進路に行かされそうである。話をよく聞くと、どうもこの母親、自分が学生の時にそれ系の科目が苦手だったらしく、自分が一方的に嫌っている長女が、自分の能力を越すことが許せないようなのだ。女の子は「私は頭がもともと悪いから」などと謙遜していたが、話を聞く限り、どう考えても、「あんたは頭が悪いから!」と怒鳴り散らす母親のせいで、勉強が捗る(はかどる)どころの環境ではなくされたことが原因である。この母親はどうせ、そうやって無理やり進路を変更させたのは自分のくせに、「ほらやっぱりあんたは地頭が悪いから」などとせせら笑うのであろう。女の子が成人して自由になるには、まだ数年ある。どうかその数年の間に、虐待毒母からは問答無用で子どもを引き離し、金だけ義務として徴収する法律ができないだろうか。その女の子は、大学進学のための金は出してもらえるので、あと数年我慢すると言うのである。なんで未成年の子どもの進路は、こんな毒親でも保護者の了承がいるのだろう。

    この母親が行なっているのは躾(しつけ)などではない。おそらく自分の子ども=自分の操り人形、あるいは自分の思いどおりにできる分身だと思っている。だから、子どもが自分が望む行動をできないだけで、ここまで非道な行動に出られるのだ。

    虐待のリスクは、発達障がいの子どもはとくに高いと言われる。目に見えない育てにくさから虐待に繋がる場合もある。先に言っておくが、必死に愛情を持って育てようとしても、周りの理解や支援が不十分なために、虐待に繋がってしまうケースも数多くあるだろう。しかし中には、「発達障がいの薬が欲しい、特性を理解して欲しい」と言う子どもに、「そんなのお前の頭が馬鹿なだけだ、薬なんかに頼るな」「ただの怠けだろう、ちゃんと育てたんだから発達障がいになるわけない」などと、とんでもない理屈をつけて、必要な支援を行わない親もいるのである。

    先ほどの女の子の親と、これら発達障がいの子どもをはなから受け付けない親には共通点がある。要するに、自分の望んだ子どもしか受け付けない、現実に嫌がり困っている子どもを見ない、ということだ。そもそも子どもとは、商品にたとえるなら、超高級品であり、かつ、どんなものかというものも事前には分からないもので、そして、親とはまったく異なる、固有の権利を持った、ひとつの独立したものなのだ。そんな当たり前のことも分からず、「自分の子どもなんだから、親の思うとおりに、煮ても焼いても構わない」「まさか薬や支援が必要な子ではないだろう、だって自分の分身なのだから。そんなことがあるとしたら、操り人形の反乱だ」などと考える親が、少なからずいるのだろう。早急に、「子どもを一個人として見ているか」「どのようなリスクを持っていても、受け入れる覚悟があるか」ということが、家庭を持つ上で非常に重要であることを、教育に組み込む必要があると思う。

    この女の子の母親は、一応金だけは出してくれている。だがそのほかの面はもう、何もかも親失格である。発達リスクのある子にはその子が苦手とする分野にポイントを絞った手助けをするのが原則である。それと同じで、お金が無い親には金銭的な扶助が与えられる法律がある。だが、なんで愛情が無い親の場合、親から権利と一緒に義務も取っ払ってしまうのだろう。なぜ義務の金だけ払わせて、愛情はこっちでかけるからと親権だけ剥奪する法律が無いのだろう。金を盾にされて毒親から離れられない子どもは、この女の子のほかにも大勢いるはずなのに。発達リスクのある子にも、無い子にも自由をというのなら、まずこのあまりに理不尽すぎる法律と、毒親についての知識が無い教育現場と社会を変える改革を、早急に行わなければいけないと思う。もう、学校教員や塾の講師など、子どもと関わる仕事に就く人全員に、「外面は完璧でも、家の中では猛毒親になっている親がいる」「お金をかけているからといっていい親などと言うのは早とちりすぎる」など、「毒親パターン」についての知識を叩き込む必要があるだろう。

    (個人ベーシック閲覧期間:2019年10月1日まで)

  • 【執筆者紹介】北村 碩子(きたむら ひろこ)
    はじめまして。生まれも育ちもずっと香川です。去年の夏から、障害児通所施設の指導員として活躍させていただいております。性格はよく天然と言われます。発達障がいの当事者として、日々関わらせていただいている利用者様からたくさんのことを学んでいます。
    趣味…読書、約束のネバーランド、物書き、犬など。ピアノ弾けますので、お子様のリクエストたまわれます。

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