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【わたしの療育】わたしの考える療育とは(西村有理)

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  • 西村 有理(にしむら ゆり)

    私の考える療育とは「子どもが持っている力を活かし、よりよい楽しい人生を歩んでいけるように関わりを持っていくこと」である。「楽しい人生」とは、自分が自分であること、自分の人生を肯定できることだと考える。

    私が、発達障がいという言葉を知ったのは高校生の時である。たまたまテレビで見て知ることになった。その時に、幼稚園からの同級生の顔が思い浮かんだ。

    彼は小学生になってから、授業中突然立ち歩き教室から出ていくことが頻繁にあった。落ち着きがなく、周囲からは問題児のように見られていた。教室から出ていく度に日直が探しに行き連れて戻ってくる。そして怒られるということが日常だった。正直私も当時はなぜそのような行動があるのか理解できなかったし、不思議に思っていた。

    テレビで発達障がいという言葉を知り、「彼はADHDだったんだ」と分かった。知らずに責めることもしてしまっていたことを反省し、後悔した。怒られてばかりで辛かっただろうなと彼の気持ちを慮(おもんばか)った。そのような出来事もあり、大学では心理学を学んだ。実習でプレイセラピーを行っていく中で、癒しを必要として来る子どもの中に、発達障がいの子どもが多いことに気がついた。単純に、「子どもたちが伸び伸びと笑顔で生きていってほしい」という単純な気持ちで、療育をしていきたいと思い、きらりに入社した。そのため、はじめのうちは見守り楽しく過ごすことをまず大切にして支援をしてきた。私も楽しくできて、子どもも楽しそうにしてくれていたらいいと思っていた。しかし、次第に保護者の方の思いを聞いたり、子どもの学校での生活の様子を考えたりする中で、「本当にこのやり方でいいのだろうか」と不安になってしまった。定型発達の子どもに近づけるためにやっているのではないと思いながらも、「これができるようになった方が将来のためにもいいのではないか」と考え、気付けば楽しむことよりも課題をしてもらうことを意識して支援するようになっていた。自分自身揺らいでしまっており、改めて療育について考えるようになった。

    療育とは、「治療と教育」であると聞いたことがある。私はこのふたつの言葉が正直好きではない。まず治療という言葉だが、発達障がいは、治すものではないと思っている。最初に定義された療育は、肢体不自由児の自活を目的とした、有効な機能訓練による障害の軽減、つまりリハビリテーションの理念として唱えられたものである。肢体不自由児に焦点が当てられていたため、治療訓練して軽減すべきものであるととらえられていた。しかし、発達障がいに関して言うと、治すものではない。どう定型発達の子どもと理解し合い共存していくかである。医療モデルとしてだけでなく、もっと幅広く、人が豊かに生活していくものとしてとらえていくべきであると思う。また教育は上から教えるという印象がある。しかし子どもといる時、こちらの方が教えられることが多い。「訓練」や「上から教える」ということではなく、私が発達障がい児に対してできる事は何かと考えた。そんな時、永井均(ながいひとし)さんの「教育において第一になすべきことは、道徳を教えることではなく、人生が楽しいと体に覚え込ませてやることである」という言葉を知った。永井さんの言葉を知った時、私がしたいことはこれであると思った。

    そのようにあらためて感じた出来事がある。2歳にも満たない赤ちゃんを担当することになった。何ができるのだろうと考えた。その子の年齢的に発達の可能性は広いとも言える。そのため、可能性を狭めることだけはしたくないと思い、初心に戻り、その子が笑顔になれるものというのを第一に考え一緒に過ごすことに決めた。アイコンタクトがない、言葉が出ないというのが主訴である。確かにアイコンタクトはなく、一人遊びが多い。型はめなどは特に好きなようで長い時間する。ただその時は横で「ぴたっ」「コロコロ」と横で声を出しながら時間を共有していった。それが何回か続いたある日のことである。おままごとセットでアイスをつくると、私の方に差し出してくれた。ペロペロとすると横から一緒にペロペロと食べる真似をしたのである。アイコンタクトも増えている。楽しい遊び、時間を共有できたことがとてもうれしかった。

    療育で大切なのは、教材以上に、その教材を使ってともに時間を過ごし共有する人だと感じた。教材は年齢ごとに興味も変わっていく。しかし教材を使っている間、受け入れて見守りともに楽しい時間を過ごした人がいたということが、子どもにとって揺らぐことのない自信になり、成長して社会に出たあと大きな力になれればいいなと思う。

    そしてはじめに述べた同級生の彼だが、以前たまたま会う機会があった。彼は高校卒業後から工事現場で働いていた。そこでいい人と出会ったらしく、とても落ち着いて穏やかになっていた。まず自分を受け止めてくれる人と出会うことがどれほど大切か感じた。受け入れられる経験を通して、安心して「自分は生きていていいんだ。生きたい」と感じてほしいし、あなたは素晴らしいということを伝えていくことができればと思う。その中で子どもが自分の強みを発見して活かし、楽しく人生を送ってもらえるように、1時間を濃密に過す療育をしていきたい。したいことだけをしてもらう、遊ぶだけでいいとは思っていない。まず楽しさを共有してもいいと思ってもらえる関係づくり、少し頑張ってみようと思える根底にある自信を育てていくことが、指導員の仕事だと思っている。その土台作りができて、子どもの可能性もより広がると思う。それが、「子どもが持っている力を活かし、よりよい楽しい人生を歩んでいけるように関わりを持っていくこと」につながると信じ、子どもと関わっていきたい。

  • 【執筆者紹介】西村 有理(にしむら ゆり)
    奈良県の児童発達支援事業所で働く支援員です。心理学を学んできました。「楽しい!」を共有できるように心がけて子どもと関わっています。よく食べてよく笑うことが好きです。


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