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はつけんラボ(研究所)

所長ブログ

  • 所長ブログでは、発達障がいをできるだけ日常の体験に近いところからあまり専門用語を使わないで改めて考え直す、というスタンスで、いろんな角度から考えてみたいと思います。「障がいという条件を抱えて周囲の人々と共に生きる」とはどういうことか、その視点から見て「支援」とは何なのかをじっくり考えてみたいと思います。

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2025.04.02

追悼:客員研究員 榊原洋一先生

小児科学者として発達障がい児の支援に関わる研究や臨床に第一人者として最先端で携わられ,また「子どもは未来である」というスローガンのもと,故小林登先生が中心となって設立されたChild Research Net(CRN)や,そこから生まれた子ども学会でも,小林先生の弟子としてその後を継いで中心となって国内外で活躍されてきた榊原先生が,3月29日にご逝去されたとの報に接しました。

私が最初に榊原先生と親しくお会いしたのは,2008年に東京で開催されたCRN主催の「第2回東アジア子ども学交流プログラム」のパネリストとしてご一緒に登壇したときのことで,私はその際中国の幼児園の子どもたちの様子をビデオで紹介しながら,文化の違いがどれほど子どもたちのそだちに大きな影響を持つのかについてお話をしました。

榊原先生は壇上で私のすぐ右隣にお座りになっていましたが,医学者らしく,文化によらない普遍的な発達について強調する感想をお話になり,私は笑いながら「病気になったら先生に診ていただこうと思いますが,子どもの育ちを理解するには文化の違いもとても重要だと思います」といったお答えをしたことを思い出します。

そんなご縁もあって,CRNが子ども理解や教育・支援に関係する研究者や面白い実践をされている保育関係者などを集めて作られた「企画運営委員会」に声をかけてその一員に加えていただき,今に至っています。また私が発達障がい児支援の現場に関わる現在の研究所の設立に関わるようになる中で,さまざまな悩みを抱えていた時にも,協力できることは何でもします,とおっしゃってくださった恩人でもあります。

そんな経緯もあり,研究所設立当初から,客員研究員のおひとりに就任していただきました。

研究所が作った「発達障がい児支援がワンランクアップする315の工夫」(合同出版)も,現場の視点を活かした支援という姿勢で一般研究員の皆さんと一緒に作ったものですが,これも「大事な知恵は現場にある」ということを言われていた榊原先生の『発達障害のある子のサポートブック 保育・教育の現場から寄せられた学習困難・不適切行動へのすぐできる対応策2800』 をひとつのヒントにしたものでした。

榊原先生は医師の立場もお持ちでありながら,「発達障がい児支援は<治療>ではない」ということを比較的早い段階から話されるようになり,同じことを考えていた私も大変に共鳴したように,常に問題を広く,柔軟に考えられる方でもあり,それが私にはとても魅力的でした。たまたま先生がNHKの番組で発達障がいについての解説をされていたのを拝見していた時にも,ついついそれまでの習慣で「治療が」と言われた後,すぐに「いや治療じゃなくて」と言いなおされたことを懐かしく思い出します。

コロナ後にCRNが復活させた国際共同研究のひとつである「子どもの生活に関するアジア8か国調査2021 」の調査結果について,企画運営委員会で議論した際も,私がその研究の視点に欠けていると思われた,国際比較データにみられる文化性の意味についての考えをお話ししたところ,「目からうろこが落ちるというより,目玉が落ちる」と面白い表現をされて早速その内容を文章化することを依頼されたこともあります(レジリエンスとモデルの存在、そしてその文化性:CRNA国際共同研究から学ぶこと)。

「専門家」による自閉症の深刻な過剰診断についても警鐘を鳴らされ,その実情をお伺いして私も驚いたことがありますが,そんな,常に柔軟に新しい考え方を取り込もうとされる榊原先生とは,今後さらに「自閉当事者の視点から見た支援」についてもいろいろお話をしたいと思っていたところでした。

ただ,少し前に大きな病気で手術をされ,心配していたところ,好きだった登山も再開されたとのお話もあり,安心していたのですが,最近CRNの方とお話をした際には,また状態がよくないと伺って不安がよぎっていたところで,この訃報に接してしまいました。まだまだいろいろ教えていただいたり,ご活躍いただきたく思っていたところ,なんとも残念としかいいようがありません。

 

先生のご冥福をお祈りもうしあげます。

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