はつけんラボ(研究所)

所長ブログ

  • 所長ブログでは、発達障がいをできるだけ日常の体験に近いところからあまり専門用語を使わないで改めて考え直す、というスタンスで、いろんな角度から考えてみたいと思います。「障がいという条件を抱えて周囲の人々と共に生きる」とはどういうことか、その視点から見て「支援」とは何なのかをじっくり考えてみたいと思います。

2021.09.01

発達障がい当事者の高校生が開発した支援システム「Focus on」

 立命館大学の共同研究者が書いた本の書評を頼まれて「立命館 アジア・日本研究 学術年報」に書いたのですが、たまたま私の書評の隣に森本陽加里さんという、当事者の大学生が書いた、宮口幸治著『ケーキの切れない非行少年たち』の書評も載っていてとても面白かったのでご紹介です。

 森本さんは高校の時に

「自分のように学校生活に生きづらさを感じる発達障害児のために何かしたいと思い、学校生活の中で発達障害児一人一人に合った支援を実現するアプリ「Focus on」を開発中です。」


という方で、そのアプリについては次のように説明されています。


「私が実現を目指している Focus on というアプリは、ヘルプを出せる力を身に着け自立することを目標としています。コグトレが苦手を自らの力で解決していくことを目指していたのに対し、Focus on では、自身の凸凹を理解し、そのうえで、苦手を補ってくれる、または、一緒に解決してくれる人を見つけ、頼れる信頼関係を築けることを目標にしています。」

 そのシステムについては森本さん自身が動画でプレゼンをされていて、これが大変にわかりやすく、かつそれにかける彼女の熱い思いが伝わってきます。(こちらの審査員特別賞の欄にある森本さんのところでご覧になれます)こういう若い当事者の活躍は本当に勇気づけられますね。

 ちなみに書評の対象となった本の著者の宮口さんはコグトレを開発して「日本COG-TR学会」を主宰している精神科医です。
 書評の中の森本さんの文章で面白いのは、ご自分が発達障がい当事者として感じていることを紹介されているところです。たとえば

 「私は、今でこそ自己理解がある程度進んだと感じられますが、小学生の頃は全くと言って良いほど自分の凸凹や客観的に見た自分が わかっていませんでした。それだけでなく、他者から自分に向けられる感情や表情にも疎く、自分 としては普通に受け取っているのですが、他者から見るとひねくれている、ゆがんで受け取ってい ると感じられてしまう場面も多くありました。そんな頃の私が読み取ることが最も苦手だった表情 は、「微笑む」です。これは母から聞いた話ですが、私の話に母が、「子供らしくてかわいいなぁ」な どと思い微笑んだ際も、私は必ずと言ってよいほど、「ばかにするな」と怒っていたそうです。思い 返せば、その頃の私は、文中の非行少年と同じで感情がすべて怒りにつながってしまっていたのです。また不登校で自己肯定感も低かったので、他者が自分に向ける感情は、「概ねばかにしているの だろう」とそう思っていたのです。そのため、母の微笑みを微笑みとして受け取れず、「あいつは私 を馬鹿にしている、ふざけるな」と、怒りにつながっていたのだと思います。」

という体験談が書かれていますが、これなど研究所が今進めている「逆SST」の題材としてそのまま使いたいような、定型発達者と発達障がい当事者との感じ方、見方のずれに典型的なエピソードです。

 実際の支援では、そういう「お互いの見え方のズレ」に双方が気づかないために本当にその人にあった支援が難しくなっているケースも見られます。引き続きこういうズレの理解を進めて(ディスコミュニケーション分析)、「誤解」に基づかない支援の仕組みを作っていきたいと考えています。

 

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