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はつけんラボ(研究所)

所長ブログ

  • 所長ブログでは、発達障がいをできるだけ日常の体験に近いところからあまり専門用語を使わないで改めて考え直す、というスタンスで、いろんな角度から考えてみたいと思います。「障がいという条件を抱えて周囲の人々と共に生きる」とはどういうことか、その視点から見て「支援」とは何なのかをじっくり考えてみたいと思います。

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2019.10.26

R君の積み木(6)大人のやり方を取り込む

R君の積み木を中心とした活動は、ここにきてさらに急激に展開し始めているようです。特にその中に大人のやり方を見て怒りを示したり、逆に大人のやり方を取り込んで自分で行う、といったことも生じています。大人に要求する場面も安定して増えてきているようです。以下、石黒留美先生からいただいた最近の様子です。茶色文字の部分が特に新たな展開や注目点と私が思えるところです。

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R君の報告です。

先週も活動の中でつみきをしました。机の上のつみきの箱を見つけると、嬉しそうな表情をして箱に向かって手招きをします。床に箱をおろすと、全部出し、キャンプファイヤーの薪のように「積む⇒崩れる」を繰り返していました。先週もつみきに関しては同じ感じを繰り返していました。

つみき以外の活動の中で、今までと違った面を見せたものがあります。せんたくばさみを使った遊びなのですが、段ボールをくまの形に切り取り、それに洗濯ばさみをつけてライオンにするというものです。

つけることは難しい(興味がなさそう)のですが、つけた状態で渡すと、外してくれます。二つ用意しておいて、今までは、「一つ取り外す⇒ついているものをまた渡す」⇒「次を取り外している間に指導員がまたつける⇒渡す」・・・をやめるまで繰り返していました。

今回は自分で外しながら、私がもう一つの方につけているのを見ていて、私とお母さんの印象では「今外したものに、なんでまたつけんねん!」という風に怒ったのです!

人がやっていることをR君が見ていた、またはそれに興味があったのか、こういうことは初めてでした。

お絵描きでも新しい反応がありました。新聞紙を広げてそこに線路を描き、私が「ガタンゴトン」や「シュッシュッ」や「連結」、と言いながら電車の絵を描いていきます。R君がそれ見ている時に私が描くのをやめ、クレヨンを置くと、私の指にクレヨンを入れて、描くように求めてきました。このような行動は今週も続いています。

そして今週のつみきの活動です。

箱の発見から「積む→崩れる」を繰り返しているところまでは同じなのですが、急に長いものを一列に並べました。何度もつみきを入れ替えたりしながら作られたのですが、曲がった物を作った事ははじめてでした。(写真)

 

そして、翌日の展開になります(写真の赤い矢印)。この日も箱の発見から「積む→崩れる」を繰り返すところまでは同じです。

この日も急につみきをつなぎ始めました。見ていると、一つのつみきの上にもう一つ載せている部分があります。写真では横から撮ったもので、右の方の青いつみきの上に緑と黄色のつみきが乗っています。

このように上に積むのは初めてのことで、今までお母さんや私が上に載せたものをR君は除けていました

しばらくつなげた後、活動開始時に積み木を集めていた場所につなげた部品(つみき)をさっと戻しに行きました。今までは、つなげられたときは帰るときまでそのままだったのですが、急に戻しに行ったので、びっくりしました。

しばらくして、また、二列つなげたのですが(そのときもそれぞれ二階建てになっていました)、写真を撮る間もなく部品(つみき)を、最初にためておいた所に戻しに行ったのです。

私にとっては、①つみきをつなげたこと、②二段にしたこと、③戻しに行ったこと、の三つともびっくりし通しでした。R君が最初につみきを積んでいた場所に戻したものを、私がつみきの箱に入れようとすると、走って箱から出しに来たので、③はおかたずけの意味ではないようです。何となくですが、部品を戻しているか集めているようにも見えました。

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さらに、この「手招き」がこの時初めて見られたものか、前から見られたものかをお尋ねしたところ、記録の範囲では初めてのようで、しかし、以下のような展開がこのところ見られていたことを教えていただきました。

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5/17 粘土の活動中、おだんごに見立てたものを指導員が渡すと食べる真似をする。
5/28 一人遊びスタイルだったが、人が横にいることが分かっているようで、コンタクトが取れる場面が出てきた。(例えば、「どうぞ」と手渡すと受け取る。偶然かもしれないが顔を見ることもある)
7/3 指導員の作ったドミノを真似をして作った。お家ではコマーシャルの真似をする(例、化粧水を顔にパシャパシャ)。テレビでお気に入りの歌が始まるとお母さんをテレビ前に引っ張っていき、歌うように要求する。お母さまの口元を見て楽しむとのこと。

この7月ころから表情も豊かになり、目と目が合うコミュニケーションが取れることが多くなってきました。
お母さんとくすぐりっこを楽しんだり、いないいないばあもできる(楽しむ)ようになってきました。
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これらの記録を拝見していると、私としては目がくらくらするくらい(笑)ものすごい展開があると思います。

人を意識する、働きかけを受け入れる、まねをする、要求する、見つめあうコミュニケーションを楽しむ、身体接触(くすぐりっこ)を楽しむ…………

こういうことが怒涛のように見られるのは、発達心理学的にはある意味で不思議ではないのですが、こんな形で急激に自閉のお子さんに出てくる過程を改めて間接的に報告していただくと、ほんとうに感動的に思います。お母さんもR君との関係をとても楽しく感じられる場面がぐっと増えてこられているでしょう。最初にお会いしたときに、R君の行動の意味が見えなくて、どうかかわっていいかもわからずに辛そうにされていた印象であったことを思うと、ほんとによかったと思います。

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