はつけんラボ(研究所)

所長ブログ

  • 所長ブログでは、発達障がいをできるだけ日常の体験に近いところからあまり専門用語を使わないで改めて考え直す、というスタンスで、いろんな角度から考えてみたいと思います。「障がいという条件を抱えて周囲の人々と共に生きる」とはどういうことか、その視点から見て「支援」とは何なのかをじっくり考えてみたいと思います。

2019.11.09

療育支援と「非認知力」

発達障がい児への療育支援が果たすべき一番基本的な仕事は、発達障がいの特性の結果陥る二次障がいを防ぐことで、そのためには子どもの自己肯定感を育てることが重要で、そのためには子どもの良いところを見つけ、しっかりとほめて伸ばし、そして子ども自身の興味関心に根差した活動を支援していくことがとても大事になる、というのが、私が研修などで常に強調していることです。

たまたまあるベテランの産業医が書いた「ストレス耐性は就学前に決まる? 産業医が見た「ストレスに強い人」が共有する経験」という記事を読んだら、ほとんど同じことが書いてあってとても面白かったので、簡単にご紹介です。
 
この記事のテーマは、学校を出た後の社会で、いろんな困難に出会いながらもそのストレスに勝って成功していける人と挫折しやすい人の違いは何か、というあたりの事です。
 
簡単に言うとそれは今の学校の勉強などでもとめられている、与えられたお勉強を上手にこなす力(ここでは認知力と呼ばれてます)の大きさではなく、IQや学校の成績などの数値では測れない、総合的な人間力(非認知力と呼ばれています)がどれほど育ってるかが一番効いている、といいます。
 
その力が育っていると1.他人のために何かをできること、2.苦手な人や合わない人ともやっていけること、3.やりぬいて結果を出すこと、の三つの点で力が発揮され、社会に出てから活躍できるのだと筆者の武神さんは考えています。
 
ではどうやったらその力が育つのかと言うと、子どもの頃の経験が大事で、そういう力を発揮する人はだいたい次のような経験をしてきていると言います。
 
学校に入る前の時期では「好きなだけ好きな遊びに集中して取り組ませてあげること、親(大人)と一緒に絵本の読み聞かせや料理・掃除・お片付けなどのお手伝いをすること、たくさん褒められること、また、うまくできることだけはでなく、許容範囲内でうまくいかないことも経験することなど」です。
 
学校に入った後は「学校や地域における好きなクラブ活動などで、仲間たちとともに、挑戦・成功・失敗などの体験を継続すること」です。
 
まとめると「子ども(学生)時代に、何か好きなことを仲間たちとともに継続的に没頭してきたという経験」が大事なのだというのですね。
 
 
一つの点を除いて、これらは私が発達障がい児・者のおかれた困難の意味を見る中で考え、研修や講演などを通して「一番大事なこと」として言い続けてきたことそのままと言えるので、私にはとてもリアルに感じられる主張です。
 
一点違うことは「仲間たちとともに」を強調するかどうかの点です。なぜなら自閉系の方たちはまさにそこで苦労されているわけですが、そこがうまくいかなくてもその人なりに自分の特性を活かし、自己を肯定し、活躍できる道があると感じているからです。
 
武神さんはたぶん産業医として、組織の中でリーダーシップをもって活躍している人、あるいは優れたフォロワーシップをもって活躍している人に注目しているので、そこに「仲間たちとともに」ということが強調される結果になるのかなと思うのですが、発達障がい者に限らず世の中には人づきあいが下手でも、自分自身の興味やこだわりを貫いていいものを生み出していくひとたち、職人や技術者、新たな技術の開発者など「専門職」の人たちがいくらもいます。
 
そういう人たちが活躍できるには、そのひとたちの苦手な分野とされている「仲間たち」との関係を補う仕組みがあればいいわけです。それはその人自身の力の問題と言うより周囲の人々の対処の仕方の問題です。そこで求められる力があるとすれば、それは自分から関係調整する力というより、他者を信頼し、他者の関係調整力に依存できる力でしょう。
 
ではその力はどうやって育つかと言うと、最初に戻って「人に認められ、肯定される経験」になります。それが自己肯定感を育て、そして人への信頼をはぐくむからです。当然その力が二次障がいを防ぐ力にもなります。
 
 
「力」というと、どうしてもその人個人に目が向きがちです。でも、別に一人でできなくてもいい。みんなでそれぞれが得意なところを発揮し、不得意を補い合って生きていけばいいわけです。それによって全体としてのパフォーマンスも上がる。武神さんの話でうまく強調されていないのはその部分ですが、そこだけ補えば、ほんとに見方が一致していて面白かったです。
 

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