2020.02.06
ぶつかりあう物語
たくさんの障がい者の命を奪った事件の裁判が続いています。
犯人のことを具体的には知らないので、報道される断片的な言葉から感じたことに過ぎませんが、この人、やっぱり「自分が生きる価値」を求めて暴走したんだろうなという気がします。
彼のちっぽけな世界の中で、「生きる価値がない」と思い込んだ人々を抹殺する「主人公」になることで、そこに「自分の生きる価値」を実感しようとした。
彼のそういう人生の物語がいかにもちっぽけになってしまった理由は、その物語を他者と共有して、「自分たちが生きる価値」に広げていけなかったことにあるのでしょう。
逆に彼の行為と主張は、全く違う人生の物語を紡ぎ、一生懸命育ててきた多くの方たちの物語を激しく傷つけることになった。
彼はもはやその彼のちっぽけな世界をむなしく主張し続けることでしか、自分を保てなくなっています。
私も自分がたくさんの「物語」とぶつかり合い、傷つけあって生きてきたと思っていますが、そこで自分にできることは、なんとかそういうお互いの物語の間に折り合いをつけていく努力を続けていくことだと思っています。彼と私が違うところがあるとすれば、まあそこだけかもしれません。
定型発達者と発達障がい者は、お互いに深く傷つけあう物語を作りながら生きることになってしまう場合が多いと感じます。
人々が世界を共有する物語としての文化、そしてその文化を多少なりとも共有して生きていると感じつつ生きているたくさんの人びとの、それぞれの物語。時に激しくぶつかり合うそれらの物語の世界をどう折り合わせて、お互いに相手を「抹殺」することなく、自分の価値を認めて一緒に生きていけるのか。
その課題として見たときに、発達障がい支援の問題と、彼のちっぽけな物語をどう乗り越えられるのかという問題とは、深いところで同じことなのだろうと思います。
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