2020.02.11
梅の花
暖冬の中、平年並みの寒さが訪れたあと、また暖かい日が来るようです。
ふと見ると、梅がほころび始めていました。
梅は寒い冬に春の訪れを微かに告げる兆しとして、いくつかうたわれていることを思い出します。
「梅一輪 一輪ほどの 暖かさ」
そのままですね。一輪また一輪と、梅の花がほころびていくほどに微かに暖かさがつのっていく。
「牆角数枝梅、凌寒独自開
遥知不是雪、為有暗香来」
これは宋の王安石の梅花という詩です。訳せば
「垣根の角に幾枝の梅が、寒さを凌いで一人咲いている。遠くからそれが雪ではないと気がついた。暗がりに(微かにと訳す人も)その香りが漂ってきたので」
くらいでしょう。王安石は厳しい冬の時代に生きた人です。梅はその先の春を予感させるものとして吟われています。
厳しい時代と言えば、平安時代、菅原道真が太宰府に流される時に詠んだ有名な歌がありましたね。時代は王安石より200年ほど遡る頃です。
「東風吹かば にほひおこせよ梅の花 主なしとて 春な忘れそ」
道真を埋葬した場所にたつ太宰府天満宮は梅の名所になっていますし、梅ケ谷餅も名物になって観光客を楽しませています。悲劇の主人公も、今では梅を通して春を待つ人の心を楽しませることになりました。
江戸の通人になるとそんな大きな悲哀はなくて、むしろお酒の香りと共にこんな都々逸を読んでます。
「梅は咲いたか 櫻は未だかいな。柳なよなよ 風しだい。山吹浮気で 色ばっかりしょんがいな。」
こちらは梅が咲いたあと、厳しい寒さの時期を越えて、もっと暖かい日をやや気だるさを感じさせながら楽しみにしている風情にも思えます。
寒さの中、待ち遠しい春への願いを梅一輪によせる。その思いを歌にして人と分かち合う。そうやってみんな生きてきたんでしょうね。
- 自閉的生き方と「ことば」2
- 自閉的生き方と「ことば」1
- 自分を「客観的に見られない」理由
- 「なんでこんなことで切れるの?」
- 当事者視点を踏まえた関係調整としての支援
- 「定型文化」と「自閉文化」
- 傷つける悲しみ
- 自閉と定型の「傷つけあい」
- 「社会モデル」から「対話モデル」へ
- 障がいと物語: 意味の世界を重ね合う試み
- 誰もが当事者:わたしごととしての障がい
- 規範意識のズレとこだわり
- 「コミュ力低い」で解雇は無効という判決
- 「カサンドラ現象」論
- 「嘘をつく」理由:それ本当に「嘘」なの?
- 自閉の子の絵に感じるもうひとつの世界
- 発達心理学会で感じた変化
- 落語の「間」と関係調整
- 支援のミソは「葛藤の調整」。向かう先は「幸福」。
- 定型は共感性に乏しいという話が共感される話
投稿はありません