2023.04.17
多数派世界の中の自閉的体験
知り合いの方から面白いセミナーを紹介していただきました。
無料のセミナーですが,すでにsold out(申し込み終了)になってました。人気ですね。
内容は要するに,今までの自閉症に関する議論が,西洋的な文脈や多数派(定型発達者)の視点からの理解に偏っていて,それぞれの歴史・社会の中で生きる文化的な視点や当事者の視点が見落とされていたことを問題とし,当事者にいろいろ語ってもらいながら考えようという話です。
私たちも質的心理学研究(No.22,62-82頁)に掲載された「説明・解釈から調整・共生へ:対話的相互理解実践に向けた自閉症をめぐる現象学・当事者視点の理論的研究」という論文で,その問題の理論的な検討を行いましたし,まもなく出版される「自閉症を語りなおす:当事者・支援者・研究者の対話」(新曜社)や,今年の教育心理学会のシンポジウム(計画中)でその問題についてさらに深堀していく予定ですが,世界のいろんなところで今そういう議論がさまざまに模索されていますね。
「健常者(定型発達者)」という強者が「障がい者」という弱者を「支援する」というパラダイムから,違う特性を抱えたもの同士が,お互いにお互いの長所と短所を理解し,補いあいながら共生していく工夫としての「相互支援」の形が,ダイバーシティーを大事にするこれからの社会に欠かせないという視点が,いよいよ広がり始めたことを実感する例でした。
- 文化と発達障がい
- 競争と共生の間にある障がい者支援
- 多数派世界の中の自閉的体験
- 自閉症を理解するための論文
- レジリエンスとモデルの存在、そしてその文化性
- 逆SSTが広がり始めた?
- 障がいを考えること=生きることの原点に戻ること
- 今年もよろしくお願いいたします
- 発達障がい児事業所の役割を社会学的に考えてみる
- 「こだわり行動」はなぜ矯正される?
- 自閉の人の気持ちが理解できる
- 事例研修で最近思うこと:改めて 当事者視点に迫る
- 共に生きること,リズムを共有すること
- 支援者と当事者の語り合いの場:「障がい者支援論」講義完結
- 当事者の思いを大事にした就労支援
- 自閉的発想と定型的発想をつなぐ:言語学からのヒント
- 生態学的アプローチと障がい
- 所長ブログ総目次
- 障がい者の活躍の場としての仮想空間
- 鈴木浜松市長を表敬訪問
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