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はつけんラボ(研究所)

所長ブログ

  • 所長ブログでは、発達障がいをできるだけ日常の体験に近いところからあまり専門用語を使わないで改めて考え直す、というスタンスで、いろんな角度から考えてみたいと思います。「障がいという条件を抱えて周囲の人々と共に生きる」とはどういうことか、その視点から見て「支援」とは何なのかをじっくり考えてみたいと思います。

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2020.01.27

「表面的な理解」?

自閉系の方のコミュニケーションの特徴にこんなことが言われることがよくあります。

「言葉の意味をきちんと理解していなかったり、文字通りの解釈をしてしまう。」
「言葉の裏の意味が分からない。」
「人の気持ちを想像することが難しい。」

私もその具体的な例として、こんな話をすることがあります。

「<暑くない?>とだれかに尋ねるとき、それは<裏の意味>で<クーラーつけない?>という要求だったりする、ということが定型ではよくあります。ところがアスペルガーの方の場合、そう尋ねられて、<いえ、暑くないです>とか<暑いですね>と答えて終わることがある。つまり<裏の意味>に気づかないということです」

たしかにそういう傾向があるとは私も思います。ニキリンコさんがホテルのラウンジに座ったとき、「お客様の声をお聞かせください」という表示を見て、そこで声を出すべきか迷った、というエピソードを聞きますが、それも同じことですよね。

でもそういう理解だけでいいのだろうか?ということも常に思うのです。

たとえばアスペルガー当事者の大内さんがとても面白い話を教えてくれたのですが、アスペルガーの青年と恋愛の話をしていた時、その青年はAさんが好きなんだけど、どうアプローチをしたらいいか悩んで相談していたそうです。

それを聞いた女性が一生懸命アドバイスをしてあげていたところ、大内さんがそこで「でも本当に好きなのはBさんなんだよね?」と青年に確認をした。Bさんというのはそこでちょっとだけ話が出たAさんの友人です。そうしたらその青年は「そうです」と答えたのですが、それを聞いてアドバイスをしていた女性がびっくりしてしまったという話です。そんなこと全然想像もしていなかったというわけですね。

この事例にも典型的に表れていると思いますが、その青年は「Aさんが好き」という「表の表現」の裏に「Bさんが好き」という「裏の意味」を伝えていた。ところがその裏の意味をアドバイスの女性は全く気付かなかったし、そうだと教えられてもなんでそうなるのか全く理解できなかったわけです。つまり、通常は自閉系の障がいの特徴と言われる「言葉の意味をきちんと理解していなかったり、文字通りの解釈をしてしまう。」「言葉の裏の意味が分からない。」という状態そのままです。

ということは、「どういうときに裏の意味を用いるか」「そこに裏の意味があるということを相手にどういう手掛かりで伝えるか」というところに定型とアスペルガーの差があるのであって、一般的に「裏の意味が読めない」という話ではないのだ、と考えるしかありません。

「人の気持ちを想像することが難しい。」ということについても、私は本当にアスペルガーの人の気持ちを想像することがむつかしいと心の底から思います。確かにアスペルガーの人は定型の気持ちを想像するのが苦手なのですが、立場を替えていえば、定型の方こそアスペルガーの人の気持ちが理解できない。そのことに苦しむアスペルガーの人はたくさんいます。

そう考えてくると、「(自閉系の人は)表面的な理解しかできない」という理解の仕方自体が、とても「表面的な理解」に過ぎないのだということになります。言ってみればそれは定型の眼鏡で見たときに見えてくる自閉系の人の姿であって、その意味で自己中心的な見方だということになります。

そういう「表面的な理解」を超えて、自閉と定型の違いをどう理解することができるのか。

私は今日もそんな模索が続きます。

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