はつけんラボ(研究所)

所長ブログ

  • 所長ブログでは、発達障がいをできるだけ日常の体験に近いところからあまり専門用語を使わないで改めて考え直す、というスタンスで、いろんな角度から考えてみたいと思います。「障がいという条件を抱えて周囲の人々と共に生きる」とはどういうことか、その視点から見て「支援」とは何なのかをじっくり考えてみたいと思います。

2020.05.30

遠隔支援と対面支援を組み合わせる必要性

 引き続き新型コロナ関連です。

 ナショナルジオグラフィックに神戸大の中沢さんへのインタビューから構成した興味深い記事があり、今後の対策を考える一つの手掛かりになりそうです。

 「新型コロナ、クラスター対策と「8割減」の本当の意味

 日本では感染が比較的軽く済み、いったん危機的な状況になりかけて緊急事態宣言が出たら、かなり早くその効果が出てまた以前のレベルに戻ったという現象があります。これはなぜかということを説明するのにとても分かりやすく感じる議論です。

 この議論では感染を二つのタイプに分けて考えるようです。ひとつは空中を漂うエアロゾルなどによる感染で、もうひとつは咳やくしゃみによる飛沫や接触による感染です。前者の場合、密集した空間(いわゆる三密)で多くの人に感染する形になり、クラスターが発生する原因となります。それに対する対策はそういう場所を作らないことですね。

 後者の場合は人と人との直接的な接触によっておこるものですから、いわゆる社会的距離化という対策が効果を持つことになります。

 ところで日本はもともと人との社会的距離が大きい文化的な習慣を持っている社会です。あいさつで抱き合ったりキスをすることもない。離れてお辞儀をしたりえしゃくをしたりです。握手もそれほど多くない。口角泡を飛ばす議論も少ないですね。さらには手洗い習慣など、衛生習慣は他国に比べて相当強力なのは私の海外経験からもまず間違いない事実です。

 そうすると、前回説明した実効再生産数がこの日本の環境の中ではもともと1を下回りやすいわけです。ですからクラスターを押さえておけば、あとは日常生活の中で自然と収束に向かっていきますし、外出制限がかかるとその効果はさらに高くなる。

 あまり強調されていませんが、日本の最近の感染拡大はすでに第二波と考えられます。どういうことかというと第一波は中国由来のもので、ウイルスはいわゆる武漢タイプです。旅行者などによって持ち込まれることになりましたが、けれども旅行者の滞在は一時的なものですし、さらに言えばそもそも中国からの旅行者がなくなりましたので、感染源は持続せず、そうするともともと社会的距離が大きく感染しにくい社会なので、自然とだんだん収束していくか、あるいはあまり拡大しない。

 実際現在はこの武漢型のウイルス感染はもうあまり見られなくなっているようです(国立感染症研究所 新型コロナウイルスSARS-CoV-2のゲノム分子疫学調査に関連情報)。

 第二次は欧米から持ち込まれました。今回急速に拡大したのは主にこの型のもののようです。この場合は感染源は一時的な旅行者ではなく、欧米からこの事態の中で帰国して日本に定住して生活をする日本人であったため、持続的に感染を拡大させることになったと考えられます。もともとそこからクラスターが次々に発生し、ニューヨークなどをほうふつとさせるような危機的状態の入り口に入った。

 けれどもそこで国による緊急事態宣言発出前から北海道をはじめ地方レベルで実質的な緊急事態宣言が出される状態になり、人々の危機意識が高まってクラスターが発生しにくい状況を生み出し、もともと大きかった社会的距離がさらに大きくなることで実効再生産数が急激に減少し、国による緊急事態宣言発出後の展開で非常に速いスピードで収まっていったことになります。

 もちろんニュージーランドなど、日本とは違う形で感染拡大を日本よりもさらに効果的に抑え込んだところも何カ所かあるようですので(※)、これだけですべてを説明できませんが、日本の感染状況の展開過程や欧米とのその違いを理解するうえで、かなり有力な考え方のように思えます。

 さて、前回の話も併せて考えると、今後について二つの事を考えていく必要がありそうです。ひとつは国内的な状況のみで考えた場合には、日本にもとからある社会的距離感をさらにもう少し意識的に強化することで、感染の爆発的な拡大はある程度コントロールできる可能性があるということです。ただしその場合、三密を避けることは持続する必要があります。

 もうひとつは今後の国際的な経済活動の再開に伴う、海外からの感染をどう減らすかという問題です。完全になくすことはもとより不可能ですが、もともと日本の中ではいわば「感染者が出ても自然に消えていく」傾向が強いので、海外からの感染数もある範囲に抑えればその力が効果を発揮して医療崩壊に至るような深刻な事態は避けやすくなります。なかなかむつかしいところですが、テレワークの最大限の活用、ITCを用いて商談を行い、海外出張を(双方向的に)最小限に減らす、空港などでの検疫体制の強化などである程度可能性は出てきそうに思います。

 また発達障がい児支援の事業所では、可能な限り三密状態を避けることが必要になりますが、実際にはそれが困難な事業所もたくさんあります。相対的に言えば個別療育を行っているところは社会的距離は保ちにくいものの三密状態になりにくいですし、遠隔支援を行えばこの問題は解消します。集団療育もzoomなどを使えば遠隔でできることがいろいろあります。

 さらに対面支援と遠隔支援を組み合わせるのも有効になるでしょう。集団療育をしているところでも、可能な子どもについては遠隔支援を行うことで、来所する子どもの数が減りますから、相対的に三密状態が緩和されやすくなります。

 このあたり、いろいろこれから工夫していく必要があり、その問題に研究所でも取り組んでいるところです。

 
 

※ ときどきそういう論調を見ますが、女性(かつ本人が科学者)が首相などトップの社会で効果的な抑え込みができているという傾向がみられるようです。多分人々の行動変容を訴える力の問題が関連しそうな気がするのですが、それはつまり「生命を守る」ことへの基本的な感覚で人々の感性に素直に訴えて心を動かす力を持ちやすいことと、それに加えて科学的な知見をその目的のために活かせる力があることが加わり、そのバランス感覚でいわば鬼に金棒状態が生まれたのかもしれないということです。それに失敗して大量死を招いている為政者との対比でみるとわかりやすいかと思います。

RSS

コメント欄(コメントは団体会員と個人会員Aの方が可能)

投稿はありません