はつけんラボ(研究所)

所長ブログ

  • 所長ブログでは、発達障がいをできるだけ日常の体験に近いところからあまり専門用語を使わないで改めて考え直す、というスタンスで、いろんな角度から考えてみたいと思います。「障がいという条件を抱えて周囲の人々と共に生きる」とはどういうことか、その視点から見て「支援」とは何なのかをじっくり考えてみたいと思います。

2020.06.29

リアルとバーチャルの関係(1)チコちゃんとポケモンGo

チコちゃんに叱られる」という人気のテレビ番組があります。

見たことのある方が多いでしょうが、着ぐるみの5歳児チコちゃんが出演者にいろんな問題を出して、答えられなかったら「ぼーっと生きてんじゃねえよ!」と頭から湯気、目から炎を出して叱る、という面白い趣向の番組です。

初めて見たときにびっくりしたんですが、顔や口の動きが実になめらかに動くんですね。以前なら着ぐるみに仕掛けをして目を上下左右に動かしたり、口を開いたり閉じたりといったくらいならできたでしょうが、まったく立体アニメの人物のようにリアルに動くので、これどうやって作ってるんだろうととても興味を持ちました。

みんな同じような興味を持つようで、たとえばここみたいにそれを解説したページもあります。

私は最初、着ぐるみの顔の部分に特殊なディスプレイをつけてリアルタイムで表情変化をさせているのだろうかと一瞬思いましたが、横顔で見たときに口の形も変わりますし、それはないだろうと思い、次にシンプルな表面の着ぐるみにしておいて、そこにCGで絵付けをするのかなと思うようになりました。

上のページの解説を見ると、やはりそういう手法のようです。

CG技術についてはもう27年も前に「ジュラシックパーク」でほんとに生き返ったのかと思えるようなリアルな恐竜を映画館で体験しましたので、2017年から始まったチコちゃんではそれをリアルタイムでやっているのだろうかと思っていましたが、そこはそうではなくて、技術的な限界から、後から加工する形に落ち着いたということのようです。

リアルな世界とは別にCGで作られる世界はVR(Virtual Reality:仮想現実)と呼ばれますが、このチコちゃんやジュラシックパークのようにリアルな世界にCGで作られた映像を重ねて見せる技術はAR(Argumented Reality:拡張現実)と呼ばれます。VRは、たとえばゲームの世界に自分が主人公を動かして入り込んでいくように、「向こうの世界に入っていく」感じですが、ARはVRの中の人物や物が私たちの世界の中に入り込んでくる、というようなもので、方向が逆になっています。

リアルな世界とバーチャルな世界がそんな感じで行き来するような展開がこれからますます広がり、日常生活にも入り込んでいくのですね。スマホを使って日常世界でポケモンを探してゲットする、ポケモンGoで遊んだことのある方なら、もうその世界に入り込まれているとも言えます。

有名な絵本ではらぺこ青虫というのがありますが、この青虫をAR技術を使って家の部屋で動き回らせることもできて、子どもがiPadでそれで遊べば、もう乳幼児期からAR世界を楽しむのが当たり前ということになるでしょう。

今もみなさんの手元にスマホがあれば、簡単にAR体験をすることができます。まずはgoogleで「ネコ」と検索してみてください。右のような表示が出てくると思います。この「3D表示」をクリックして、あとは指示に従って操作をすると、下のように部屋にネコが出現して、いくつかの動作をします。

もちろんスマホのカメラの位置を変えれば、それに応じた形でネコが見える角度も変わります。あたかも本当にそこにいるかのような見え方になります。またネコ以外にもトラやウサギ、鳥などでも同じことができます。部屋にトラが出てくるとなかなかの迫力です。

このバーチャルな3次元の世界、実は聴覚の世界ではとっくの昔から私たちになじみ深くなっています。それはステレオで音楽などを聴く、という体験の世界です。あれも面白くて、ヘッドフォンで聞くと、頭の中で音楽が鳴っているように聞こえますよね。スピーカーがあればそちらの方にバァーチャルな音源と音響の世界が作られますけれど。

今は視覚でバーチャルな世界を作るという手法がものすごく進展していますし、触覚、味覚、嗅覚などについても現在基礎的な技術開発が行われているようですが、早晩一般にも普及する形になっていくでしょう。それらの技術が統合されていくと、やがて「マトリックス」の世界が現実化していく、みたいなことも起こりえます。

ARに話を戻しますと、スマホを使ったAR世界の利用について、googleがさらに一歩進んだ技術をあと数ヶ月で一般に公開できるところまできたそうです。見ていただくのが一番早いのですが、この技術では、まず周囲の空間(部屋など)の3次元の立体地図をスマホに作らせます。といっても単純な作業で、作らせたい場所について、スマホのカメラで写しながら歩き回るだけの事です。それでソフトが自動的に立体地図を作ってくれます。

そうやってスマホで読み取った3次元の部屋の構造に合わせて、CGで作る物やキャラクターを配置したり、動かしたりするんですね。そうすると何ができるようになるかというと、CGで作ったものや人物などが「物の陰に隠れる」ことができるようになります。その違いはたとえばこの動画で見ることができますが、CGで作ったものの「リアルさ」が全然変わってくるのがわかると思います。こういうことを普通の(値段は高いやつですが)スマホで普通にできるようになるというわけですね。

上の例ではipadやスマホなどの画面を通してみる形で、そのAR世界は画面の中だけですが、VRでも進みつつあるようにこの機能が眼鏡に組み込まれれば、眼鏡に見える世界にどこにでもAR空間が作られることになり、眼鏡をはずさない限りはどっぷりと自分がAR世界に入り込んだ状態になっていきます。

ちなみに上で紹介した「物の背後に隠れる」動画ですが、いろんなタイプのその技術の活用例が紹介されていて、同じような技術開発をやりたい人材をリクルートするためのものでもあるようです。これからどんどんその世界の開発に身を投じる人たちが増えていくでしょうし、さらに加速度的にその技術が進み、AR世界が広がっていくと思います。

さて、こういうテクニカルな話は始めればきりがなくなると思いますが、ここで考えたいのは実は遠隔支援という問題です。

新型コロナで世界に激震が走り、人々の生活が激変してしまいました。

ジョン・ホプキンス大学のデータでは、これを書いている今の段階で確認されている世界の感染者数は9,682,414人で、同じく確認されている(公表されている)死者は491,113人です。まもなく感染者は1000万人、死者は50万人をこえますが(あ、今見たらもう超えてました。10,004,643人です。死者は499,296人)、恐ろしいことにその増加速度はさらに著しくなる傾向です。

世界の感染者数の1位と2位であるアメリカやブラジルなどの感染拡大はさらに勢いを増しています。感染拡大の中心地は中国から東アジアへ、次にイタリア、スペイン、イギリスなどヨーロッパに移動し、さらにアメリカが世界最大の感染地域となり、今最も激しいのが南米などになっています。

ヨーロッパはロックダウンを行わない方針を貫いたスウェーデンでかなり増加が著しくなるなどはありますが、全体としては収まってきています。反対にアメリカはいったん少し増加速度が緩やかになったかに思ったところで経済活動再開を急いだ南部や西部で急激な増加が始まり、一日の感染者数増加がこれまでの最高を更新したりしています。

トランプ政権が対策に全く消極的な姿勢を見せていたころに、専門家が死者数については対応をしっかりしなければ10万人をこえる可能性という予測を出した時には、さすがにトランプ大統領が慌てた様子を見せましたが、今の死者はとうにそれを超えてしまっていて(現時点で125,046人)、さらに拡大していく傾向が明らかです。

かといって生活を成り立たせるには基本的な経済活動を止めるわけにはいかず、どこまで感染拡大速度を抑え、医療崩壊に至らないレベルで感染を受け入れつつ、最終的にはワクチン開発に待って、ワクチンで集団免疫を獲得するという以外に方法がありません。

ワクチン開発には時間がかかりますし、さらに製品化と世界への普及までのプロセスを考えれば、報道などでいろいろ言われていることを見ていても、素人の目にはせいぜい来年どこまでワクチン対策が進むか、ということが問題になるくらいではないかという気がします。

そういう状況の中で、発達障がい児への支援も、対面での支援のほかに、遠隔支援という選択肢がこれからも重要になりますし、発達障がい児支援事業所を利用する保護者の皆さんを対象として研究所が行った調査(回収数1333名)でも、私たちの想像を超えて遠隔支援に積極的な意識を持たれている方が多くありました(第一次報告書はこちらから)。

同時にITを使った遠隔支援については、当然のことながら否定的な意見をお持ちの方もいらっしゃいます。そこで問題になることの一つが「リアル」と「バーチャル」の問題だと言えます。

今準備中の第二回公開講座でもこの問題を考えていきたいと思っていますが、次回、上に紹介したようなVRやAR世界の展開の問題と併せて、このリアルとバーチャルの問題、対面支援と遠隔支援の問題をもう一歩考えてみたいと思います。

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